小学校入学に照準を当てた

 その決断には、自身のグローバル教育体験も深く関係している。大学卒業後、ロンドン大学キングス・カレッジに進学し、戦争学の修士号を取得した穐吉さん。現役の外交官や軍関係者などが集まる環境で学んだ経験は「人生観が大きく変わるほど刺激的で、視界が開けた」。

 帰国後はまず、ビジネスにおけるベーシックな力を徹底的に鍛えてくれるから、とリクルートに就職し、広報、経営企画、営業や編集など様々な仕事を経験しながら約8年在籍。その間、結婚、出産を経て働き続けながらも、ぼんやりと「子どもにも海外で学ぶ機会を用意してあげたい」と思うようになった。

 「それも、できるだけ早い時期がいいと思っていました。“英語がハンデになってほしくない”という思いからです。私自身、大学院留学時代は毎週50冊以上の英語の参考文献を読み、常に最新の論文に目を通すなどして授業に臨みました。しかし、母国語が日本語である私はどうあがいても、英語がネイティブのクラスメートに比べスピードや情報収集力、そしてディスカッションのシーンではかないません。子どもには少なくとも英語という単なる“ツール”においてハンデを抱えずにいられる環境を作れたらと思っています。また、小さいうちであれば、自分の国籍や肌の色などを意識し過ぎずに自然に新しい環境に溶け込めるはずだと考えていました」

旅行してシンガポールに魅せられた

 グローバル教育を考える人が迷うポイントは、「いつから」「どこで」という2点だ。「いつから」について、穐吉さんの場合は「小学生のうちに」とイメージしていた。さらに情報を集めると、海外の小学校は途中編入ではテストが必要になるなどハードルが上がることが分かり、グローバル教育開始のタイミングは「小学校入学時点」と決めたという。

 「どこで」についてはそれほど明確に決めていなかったものの、5年ほど前、家族旅行で訪れたシンガポールが気に入った。

 「常夏の心地いい環境の中、経済的にも発展していて、とても安全な環境。何より、多様な文化・宗教を許容しながら人々が共存している“調和”の国であることが魅力的でした」

 「ここに住んでみたい」と話すと、グローバル教育未体験派の夫も「うん、いいね」と賛成した。シンガポールは刑法が厳しく、「女性一人の夜間外出も心配ない」といわれるほど治安がいい点も決め手に。

 ビザ取得の面でも、非英語圏の外国人就労には厳しくなっているアメリカやユーロ諸国よりも現実的だった(シンガポールの就労ビザは一定の学歴と収入の条件が求められ、2年ごとに更新される)。

放課後雨が降っている日はメイドさんと一緒に家の中で絵を描いて過ごすことも。ママの誕生日のお祝いに絵を描いているところ
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