日本の子ども貧困率を下げるために

山本 休眠口座を活用するとか方法はまだありそうですよね。

駒崎 休眠口座を全部使ってもいいくらいだと僕は思いますよ。官邸が「子どもの貧困対策」と言い出したこと自体は進歩ですが、抜本的な政策には至っていない。国の長期的経済成長には人的資本の充実は必須で、アベノミクスにも通じるはずなのですが、どう政策を取ったらいいのか迷っている印象を受けます。

山本 ご指摘の通りだと思います。なぜ進まないのか。その理由は、一言で言うと、まだこの問題の深刻さに対する「理解の不足」ですね。子どもの貧困対策に積極的に取り組もうとしている足立区も、調査の実施だけで逆風を受けたと聞いています。

 子どもの貧困問題の解決なくして1億総活躍社会の実現はないし、子どもの貧困対策が将来の社会に対する投資になる。その認識を社会全体で共有できていない、ということが非常に大きいと思っています。足立区の実態調査は、今後の政策の効果を測るうえでも有効なもの。自治体がその地域の実態を把握し、足りていないものを見極めることが政策に反映できる即効性の点でも大事だと思います。国としても実態をふまえ、地方自治体とともに対策を拡充していくことが必要です。

駒崎 対策として打てる方法は大きく「サービス系」と「給付系」に分けられますよね。無料塾とか食事の提供といったものはサービス系で、給付系というのは児童扶養手当といった生活にかかるコストを負担してベースを底上げするもの。恐らく、自治体が得意とするのはサービス系で、給付系を充実させるのは国の役目だと思うんですよね。そしてその給付系の額というのが、日本は過小といわれています

山本 昨年末に決定した児童扶養手当拡充も、かなりのせめぎ合いの結果でした。来年度、ひとり親家庭の親が転職に役立つ資格を取得することを後押しする施策も大幅に拡充します。

駒崎 ちょっと突っ込んでもよろしいですか? きめこまかな部分にも目を向けて、頑張っていらっしゃるとは思うんです。でも、16%超といわれる日本の子ども貧困率を他のOECD諸国並みに下げるには、まだまだ球として小さいんじゃないかと感じてしまいます

 例えば、「子育て期間には少なくとも月20万円は保障されます」といったところまでやらないと、状況は変わらないのではないでしょうか。「じゃ、財源どうするの?」となりますよね。配偶者控除をなくせば4兆円出る。全部廃止は無理でも、年収700万円以上世帯の控除をなくすだけでも兆レベルで財源は捻出できるはずです。確か、ひとり親の児童扶養手当第2子加算倍増でも160億円くらいのオーダーでしたよね? 兆レベルの財布ができると、相当色々なことができると思うんです。もっと大胆な付け替えはできないのか? と常々考えているのですが、いかがですか? 強い安倍政権だからこそ振れる大ナタではないですか?

山本 簡単ではない問題ですね。配偶者控除の是非は議論が続いています。私としては「女性同士の戦いにしてはいけない」という思いが強くあるので、慎重に検討する必要があると感じています。所得税の控除のあり方については今後は1年かけて徹底的に議論することになっていますが、仮にお金ができたとして「どう使うか」のコンセンサスをとるプロセスが非常に重要になってきます。公明党としては子育て支援を最も重視しているのですが、他のところにあてるべきといった声もあります。

駒崎 自民党はカンタンに3万円を高齢者1000万人に配っちゃうわけですからね(笑)。あっさりと3600億円分。「財源ないって言っていたじゃん!」と突っ込みどころ満載ですよ。3600億円あれば、全国の子育て支援が必要な家庭に300億円を12年間配れたわけなのに。それだけでどれだけの子どもを救えるのか。

山本 (小声で)「(子どもや若者に)ください」って言ったんですけどね…。

駒崎 何にお金をかけるべきか、優先順位が国民のコンセンサスとして盛り上がっていかないと。僕達が声を上げていかないと、どんどん配られていっちゃいますね。