絶えず流れる子ども虐待のニュース。ニュースを見るたび胸を痛めている人は多いのではないでしょうか。今回、子ども・子育て支援の政策に熱意を持って取り組んでいる山本香苗議員(前厚生労働副大臣)を、新生児特別養子縁組(赤ちゃん縁組)事業をスタートさせて赤ちゃんの虐待死ゼロを目指すNPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんがインタビューしました。上下2本の記事でお伝えします。

自公政権で子ども・子育て支援に本気で取り組む

駒崎弘樹さん(以下、敬称略) 山本香苗議員は公明党女性局長として、子ども・子育て支援の政策に熱心に取り組まれています。平成26年9月から27年10月まで厚生労働副大臣として政権に入られて(昨年10月の内閣改造で退任)、“子育て支援に本気で取り組むDUAL世代の政治家”として心強い存在でもあります。今年8月分から決まったひとり親の「児童扶養手当引き上げ」にも大変ご尽力されたんですよね。

山本かなえ議員(以下、敬称略) 特に経済的に厳しいひとり親家庭への支援を強化したもので、子どもが2人以上いる家族への加算が最大倍額の支給になります。2人目以降の児童扶養手当の加算引き上げは数十年ぶり。政治が強い意志を持って旗を振ったというのがとても大きいですね。子どもの貧困対策については長く取り組んできたつもりですが、トップの姿勢でここまで変えられるのだと改めて感じているところです。

駒崎 まさに偉業だと思います。ちなみに、山本先生が政治家になった経緯を教えてください。

山本 政治家になる前は外務省にいました。カザフスタン大使館に約2年ほど赴任して帰国した後、出馬のお話をいただいたのが29歳のとき。参議院議員に初当選させていただいたのは30歳2カ月で、最年少記録はまだ破られていないみたいです。政治の世界にはド素人で入ったようなものですが、私の立場や経験から世の中の役に立てるようなことがあればという気持ちでチャレンジしました。当時は党内に若い人も女性も少なかったので、正直、苦労もありましたが、生活に直結した課題解決第一に進んできました。

駒崎 少数派の立場でありながら奮闘されてきたと。所属されている公明党は「福祉」を重視する党というイメージがあります。

山本 はい。なぜ公明党が福祉に強いかというと、結党以来、「市民相談」という取り組みを地道に続けているからなんです。党員に限らず広く生活者のご意見を聞く機会を設け、政治を生活の現場から変えていくことを目指しています。

 そういった取り組みの中で見えてくるのが「制度と制度の狭間で苦しんでいる人達」であり、「複数の課題を抱える人達」の存在なんです。例えば、DV(家庭内暴力)の問題を抱えながら、子どもの不登校問題も抱えるなど、複数の問題が絡み合っているケースは非常に多いんですよね。それを「DVはこちらの窓口」「不登校はあちらの窓口」と切り分けて対応していると、総合的な解決にならないし、根本的な問題を見逃してしまうんです。

 そういった問題に対応し、成立させたのが「生活困窮者自立支援法」です。ワンストップで生活の困りごとを相談できて、必要な支援につながる仕組み。昨年4月から施行となりましたが、積極的な自治体などでは有効な取り組みにつながっているようです。「地方創生」のベースには「地域の支え合い」が絶対必要で、経済的孤立、社会的孤立の両方の解決が重要だと感じています

駒崎 「孤立」に関連する社会問題で、DUAL世代が心を痛めているものの一つが「子どもの虐待」だと思うんです。今日は、子どもの虐待の解消に向けての政策面での課題や僕達自身ができることを伺いたいと思って来ました。

 毎週のように目を覆いたくなるような残酷な事件が報道されていて、子どもを救う方法はないのかと歯がゆい気持ちでいっぱいです。1月に起きた狭山市で3歳女児が虐待死した事件の場合、半年前に2回も警察が自宅を訪ねているんですよね。それでも、なぜ防げなかったのか。せめて児童相談所(以下、「児相」)と情報共有できていれば結果は違ったのではないか。なぜ最悪な結果になってしまったのでしょうか?