夫への交渉がW−Wになった理由

 実はAさんはこの交渉を成功させるために、1週間かかりました。W−W交渉の3ステップ・フレームワークを使って念入りに準備をしました。初めに状況把握、夫の性格を考え、どんなことが嫌か、を考えました。そして夫が嫌だと感じる状況にならないための解決策を考えました。実際に交渉してみると、夫は予想以上にいろんな心配をしているのが分かりました。そこで、一度交渉を中断し、再度、夫の不安要素一つ一つに対応した解決策を準備して交渉し、最終的に成功させました。具体的にどんなところがW−W交渉のポイントか、一つ一つ見てみましょう。

 「今まで通りでできればいいんだけど」
 パートナーの言葉を一度受け入れ、決して否定をしないで共感を表しています。

 「そうか、あなたも残業なしで帰れるなら頼まなくてもできるけど、それは難しいでしょ?」
 できる? できない? の二分法をポジティブに誘導。できないでしょ? と否定形を使わないことで、相手もネガティブな感情ではなくなります。

 「なら、小型の金庫を買いましょう。そして寝室はやってもらわず、どちらかが家に居るときに限定する」
 夫の言い分をずべて先に聞いた後で、それに対応する策を答えています。これは、どんなことを相手は嫌がるか、そのためにどんな答えをすべきか、と入念に準備をしたたまものです。そして自分から言うのではなく、相手から嫌がる理由を言ってもらうのがポイントです。

 「1カ月だけそれでやってみて」
 フットオンザドアという手法です。試供品やちょっとだけ、という形で最初のハードルを越えさせ、あとはなし崩しで目的を果たす方法。交渉ではよく使われます。

 「すっごい不安なのよね」
 自分の感情、不安感を正直に話すことで相手は信頼されている、頼られているという印象を持ちます。協働作業を促す効果があります。

 「ありがとうね」
 最後は必ず感謝で締めくくります。「ごめんね」で終わることに比べるとW−Wになる効果は100倍です。

 もちろん、このやり方はすべての男性に応用できるものではありません。そもそもAさんが日ごろからパートナーである夫の欲求を満たすコミュニケーションをしていたことが功を奏しています。なぜなら日ごろ冷たい言葉しか言わない妻が突然家事の相談をするときに、優しい言葉を使ったらかえって怪しいですよね。交渉は相手の性格や置かれている状況によって変わりますが、W−W交渉のポイントを踏まえて行えば、交渉を成功させる確率は必ず上がります。ぜひ皆さんもポイントを参考にして試してみてください。