元塾講師でもあり、大阪市の敷津小学校で民間人校長を務める山口照美さんが、中学受験について語ります。
(日経DUAL特選シリーズ/2016年3月収録記事を再掲載します。)

 中・高・大すべての入試に10年以上関わる中で、子ども達に伝えてきた言葉だ。大学入試は絶対ではない。だからこそ、受験生としての努力や意志が問われる。「何となく受験するならやめてええねんで」と塾や予備校でダレる受験生を叱ってきた。高校入試は、思春期の子ども達の真剣勝負。怠けたい欲望と闘い、自分の将来のために奮闘する。この時期に、受験をすることは自分を見つめる機会にもなる。だから「通過儀礼」と呼ぶ。

中学受験は結果より過程が大事と伝えておく

 私は高校入試推奨派だ。体も心も、受験のプレッシャーに耐えるだけ成長している。

 一方、中学受験には賛成しきれない。男女入り交じって遊べる最後の数年の時間を、奪うことになる。成長にもばらつきがあり、膨大な量の暗記やトレーニングに耐えられるだけの体力・気力が育っていない。だから私は「中学受験は宝くじ」と定義する。当日のプレッシャーや体調不良で落ちる子がいる。それは、君の能力不足でも努力不足でもなんでもない。中学受験は、入試日程次第で倍率も毎年変動し、「運」の要素が強い。それに12歳という幼さで臨んでいる。不確定要素満載なのだ。

 だからあえて「宝くじ」と言っておく。子ども達の傷を、少しでも小さくするために。

4月に入学してくる子ども達を迎えて、1年生と5年生が学校生活を紹介したり、ゲームをしたりする「わくわくスタート」。5歳も離れた異学年での学びは、小学校ならではだ
4月に入学してくる子ども達を迎えて、1年生と5年生が学校生活を紹介したり、ゲームをしたりする「わくわくスタート」。5歳も離れた異学年での学びは、小学校ならではだ