ウルトラマンの世界にどっぷりとハマっていく息子を見て、父親は……

 本屋に行けばウルトラマン関係のものを欲しがる。近所のダイエーに行けばおもちゃ売り場にあるウルトラマン・コーナーへと一直線。まだ数も満足に数えられず、そもそも数字という概念が芽生えているかどうかすら微妙だというのに、いつの間にかわたしの携帯電話を使ってウルトラマンの動画を見るようにもなった。まず4ケタの暗証番号を押してロックを解除し、Siri(シリ)を起動させてこう言うのである。

 「しょうわ、うったーまん、どうが」

 Siriが使い手の意図を正確に理解する確率、およそ30パーセント。何を言っているのか聞き取れず、とんちんかんなサイトに誘導されることもあるが、そうすると虎は何度でも繰り返す。で、なんとか目的地へとたどりつく。ちなみに何回かに一回はヤッターマンにたどりつくことがあり、そんな時はうったーまんのことはあっさり忘れてドロンジョ様を眺めている。

 当然のことながら、ヨメは怒る。3歳児にケータイ。百害あって一利なし。怒りの矛先は息子ではなくわたしに向けられる。返す言葉などあるはずもなく、サンドバッグ状態になってしまうわたくし。仕方がない。理は向こう側にある。

 しかしながら、いくらヨメが怒ったところで、問題の根本的解決には至りそうもない。

 というのも、虎からすれば怒られているのはまず第一に父親であって、怒りの直撃弾を食らっているわけではない。かつ、ウルトラマンの世界にどっぷりとハマっていく息子を眺めながら、父親が明らかに嬉しがってしまっていることにも気づいている。ヨメからすればまったくもって理解不能だろうが、自分が子どものころに熱狂した世界に、約半世紀の月日を経て自分の息子が食いついているのである。喜ばない父親なんているわけがない。

 というわけで、ここにきて急速に機を見るに敏な一面を発揮するようになってきた虎は、父親と二人きりの時は堂々と、母親がいる時はご機嫌をうかがいながら、あるいはこっそりと動画を眺めるようになった。なってしまった。今のところ、解決のメドはまったく立っていない。

 むしろ、悪化の兆しさえある。