オンライン教育事業を立ち上げ。賞をもらったことが失敗に
30歳になった2010年、女性向けのオンライン教育事業を行う株式会社ヒメルリッチを立ち上げ。その翌年に開催された経済界のイベントでプレゼンし、特別賞を受賞しました。
「当時、オンライン教育事業はまだあまりなく、IT×教育という先見性、女性の活用、起業への思いという点が評価されました。その時、サイバーエージェントの藤田さんに『やり方によっては成功もするけれど、失敗もする』とアドバイスされたんです。けれど、賞をもらったことで、この事業は成功すると過信してしまい、改善すべき点も改善しませんでした」
ヒメルリッチは、教えたい講師と学びたい女性をつなげる場を提供し、受講者はお金を払ってレッスンを受ける仕組み。受賞してから1年が経過しましたが、売上と会員数が一向に増えなかったといいます。
「会員数が増えないので、ターゲットである地方在住の既婚女性のお小遣いを調べたら、月5,000円〜15,000円。その中から教育という見えないものに投資するかというと、なかなか難しいことにようやく気が付きました。さらに、オンラインという形態が、そもそもITリテラシーが低い傾向にあるママともマッチングしなかった。女性は想いが先行しがちでマネタイズは後回しになりがち。マーケティングをせずに事業を立ち上げていたのがもう1つの失敗でした」
主婦・ママは商品価値がない。目の前で企画書を捨てられる
事業としては失敗だったというヒメルリッチの起業。けれど、荻野さんは諦めません。
「“主婦・ママの働く場を作りたい”という想いを実現するために、今度は教育をした主婦・ママの出口(働く環境)を作ろうと考えました」
そこで、人材派遣会社と提携し、働く場を提供しようと模索。東京都内にある何十もの会社に「ママ達を使ってください」と営業をしたものの、9割の会社に断られました。
「主婦・ママというだけで、『商品価値がない』と言われました。なぜなら、派遣会社は企業に人材を紹介し、派遣時間が収益になります。けれど、主婦やママは子どもの病気などで急に休むことが多く、そうなると派遣会社の信頼がなくなってしまうというのです。その理由は分かるんです。でも、優秀な人も『主婦・ママ』という看板だけでそう見られてしまうのがもったいないと思いました」
そんなジレンマを抱えていた矢先、大手の人材派遣会社の社長にプレゼンをしたら、目の前で企画書を捨てられたそう。
「新入社員を連れてきて、『この企画書を読んでどう思う?』と聞くと、『社長のおっしゃる通りで価値がないです』と言われたんです。その時、私は新入社員でも分かることも分かっていない、私にはビジネスセンスが無いんだ、とショックを受けました」
当時、すでにママだったという荻野さん。こんなに想いがあって、悪いことをやっていないはずなのに、主婦・ママの価値を認めてもらえないならもうやめようと、帰りの電車で泣きながら思ったそう。
「『私は起業に向いていないから、もうやめる』と夫に言ったんです。すると、『明日から専業主婦になったらいいよ。でも、今まで頑張ってきた何年間かは意味がなかったね』と言われました。それを聞いて、奮起。もう1回やり方を変えて続けてみようと思いました」