ただでさえ仕事と家事・育児に追われて日々忙しいのに、起業し、会社を経営しているママは、どのように両立しているのでしょうか? 起業の裏には社会への問題意識があり、また現在に至るまでに多くの壁を乗り越えてきたに違いありません。

 そんなママ起業家や社長に、起業するまでの経緯や仕事と家庭の両立についてなどをインタビューする新連載がスタートします。第1回の今回は、2人の子育てをしながら、「ママ×IT」という視点でママの働く場を提供している株式会社マミーゴーCEO、荻野久美子さんを紹介します。

夢は専業主婦。父親のリストラがきっかけで最初の起業

 荻野さんが初めて起業をしたのは20歳のとき。短大を卒業し、4年制大学に編入しようと思っていたタイミングに突然やってきました。

 「父親がリストラに遭い、住む家もない、食べ物もないという状況に。なんとか短大は卒業させてもらったのですが、自分で稼いで高校の奨学金を返し、両親の生活を支えないといけなくなりました」

 そこで、建築関係の職人をしていた兄と、店舗のデザイン設計・製作施工を事業とする会社、クリエイティブスペースノット(現、株式会社ノットコーポレーション)を立ち上げました。

 「もともとは専業主婦が夢。家が貧乏だったので、お金持ちのイメージがある専業主婦に憧れていました(笑)。社会に出て、家族のために働かざるをえない状況になったときに、会社員だと最大の給料が決まってしまうと思い、起業することにしました

 荻野 久美子 株式会社マミーゴーCEO

 1979年大阪生まれ。東京都在住。1999年甲南女子大学短期大学部卒業。父親が30年勤務した会社をリストラとなり、それを機に兄と店舗のデザイン設計・製作施工を事業とする会社、クリエイティブスペースノット(現㈱ノットコーポレーション)を立ち上げる。以後2013年春までの14年間、経営に携わり、年商 6億円まで成長させる。2010年株式会社ヒメルリッチ設立。2011年経済界『金の卵発掘プロジェクト』にて特別賞受賞。2014年株式会社マミーゴ―設立。2014年3月より学生向けビジネススクールPSFのバックオフィスコースの講師を行う。2014年3月日本女性ビジネス協会副理事に就任。http://mammy-go.jp

 その後、会社は順調に成長。荻野さんが25歳になる頃には、従業員が20名ほどの規模になっていました。

 「将来に対して何も考えていない学生だった私が、仕事をすることで自分自身が成長でき、さらに社会に貢献できる。『仕事はすごい!』と思い、仕事をする女性を増やしたいと思うようになりました。特に、建築業界は女性が入りにくい環境。トップがどう発信していくかが重要だと感じ、女性が仕事も育児も両立できる場を作りたい、と思うようになりました」

 当時は結婚も出産もしていなかった荻野さんが、主婦やママをターゲットにしたのは、1つの出来事がきっかけでした。

 「25歳の時に、企画営業の最終面接を担当したんです。面接をした女性の2人とも、人柄も問題なくスキルも同程度、子どもがいる環境も同じでした。唯一違ったのが年齢で、32歳と25歳。最終的に25歳の女性を選びました

 その時、自分の選択にショックを受けたといいます。

 「自分が経営者として採用するなら、若い方が良いと判断しました。女性の私でさえそうするなら、世の中の男性の多くは同じような判断をするのではないか…と思ったのです。年齢は変えられないけれど、何だったら変えられるだろうと考えた時に、スキルだと気付いたんです。それで、主婦やママに対する教育事業を行おうと、起業を決意しました」

 そこから、まずは5年間で自己資金を貯め、30歳で起業しようと計画。会社で財務・営業・広報・マネージメント・人事労務と経営全般を担う一方、事業で成功している人の話を積極的に聞きに行き、起業の準備を行いました。