夢は専業主婦。父親のリストラがきっかけで最初の起業
荻野さんが初めて起業をしたのは20歳のとき。短大を卒業し、4年制大学に編入しようと思っていたタイミングに突然やってきました。
「父親がリストラに遭い、住む家もない、食べ物もないという状況に。なんとか短大は卒業させてもらったのですが、自分で稼いで高校の奨学金を返し、両親の生活を支えないといけなくなりました」
そこで、建築関係の職人をしていた兄と、店舗のデザイン設計・製作施工を事業とする会社、クリエイティブスペースノット(現、株式会社ノットコーポレーション)を立ち上げました。
「もともとは専業主婦が夢。家が貧乏だったので、お金持ちのイメージがある専業主婦に憧れていました(笑)。社会に出て、家族のために働かざるをえない状況になったときに、会社員だと最大の給料が決まってしまうと思い、起業することにしました」
その後、会社は順調に成長。荻野さんが25歳になる頃には、従業員が20名ほどの規模になっていました。
「将来に対して何も考えていない学生だった私が、仕事をすることで自分自身が成長でき、さらに社会に貢献できる。『仕事はすごい!』と思い、仕事をする女性を増やしたいと思うようになりました。特に、建築業界は女性が入りにくい環境。トップがどう発信していくかが重要だと感じ、女性が仕事も育児も両立できる場を作りたい、と思うようになりました」
当時は結婚も出産もしていなかった荻野さんが、主婦やママをターゲットにしたのは、1つの出来事がきっかけでした。
「25歳の時に、企画営業の最終面接を担当したんです。面接をした女性の2人とも、人柄も問題なくスキルも同程度、子どもがいる環境も同じでした。唯一違ったのが年齢で、32歳と25歳。最終的に25歳の女性を選びました」
その時、自分の選択にショックを受けたといいます。
「自分が経営者として採用するなら、若い方が良いと判断しました。女性の私でさえそうするなら、世の中の男性の多くは同じような判断をするのではないか…と思ったのです。年齢は変えられないけれど、何だったら変えられるだろうと考えた時に、スキルだと気付いたんです。それで、主婦やママに対する教育事業を行おうと、起業を決意しました」
そこから、まずは5年間で自己資金を貯め、30歳で起業しようと計画。会社で財務・営業・広報・マネージメント・人事労務と経営全般を担う一方、事業で成功している人の話を積極的に聞きに行き、起業の準備を行いました。