「空気を読まねばならない」と思うことの功罪
第1回のコラムでもお話しした通り、当コラムの目的は、アドラーが言う【幸せの3条件】を皆さんにお伝えすることです。
前回までのコラムでは、【幸せの3条件】の<その1:自己受容=ありのままの自分を認め、自分を信頼できること>について、アドラー心理学の理論を用いてお話を進めてきました。
「自分を信頼する」って、実はとっても深い意味を持っています。
「自分のことを信頼できているかどうか、よく分からない。自分を信頼する方法が知りたい」
「他者の目、他者からの評価が気になり、自分に自信が持てない」
このような悩みを抱えて、私のところにカウンセリングに来られる方もたくさんいらっしゃいます。そんなとき、私は「同調圧力からの解放」「承認欲求からの卒業」というお話をします。
日本社会に通底している「空気を読まねばならない」「皆と同じでなければならない」という無言の「同調圧力」を強く意識し過ぎると「ホントは私、○○って思っているけど、言わないでおこう」という経験を積み重ねることになります。そして、いつの間にか「自分を信頼できなく」なっていくのです。
一方、こうした社会風土は、相手を気遣う文化や、東日本大震災のときに自然と共有できた「絆(きずな)」の感覚など、日本の良さとも表裏一体の関係にあります。ですから、個人的には「そこそこ、の程度感」が大切だと思っています。
また、フェイスブックなどSNSでの「いいね!」の数に一喜一憂するような「他者からの承認を求める」傾向も強まっているように感じます。その結果、「他者から認められる」「他者に褒めてもらう」ことが判断基準になってしまい、本来持っている「自分の中の素直な気持ち」を押し殺してしまうような方も増えているようです。
アドラー心理学が日本で一気にメジャーとなるきっかけをつくったベストセラー『嫌われる勇気』(岸見一郎/古賀史健 ダイヤモンド社)は、まさに現代の日本社会に生きる私達の「他者から嫌われることを極度に恐れていることによる心のモヤモヤ」を言い当てたタイトルだったからこそのヒットだった、ともいえるのではないでしょうか?