子どもは「自己受容→他者信頼→他者貢献」で自立していく

 アドラーは他者のために自己犠牲までする人を「社会に過度に適応した人」と呼び、そうした在り方に警告しました。

 ・自己を犠牲にすることなく、信頼する相手のために見返りを期待せずに貢献する
 ・その結果、相手の心からの「ありがとう」「助かったよ」という感謝の言葉をもらう
 ・不完全な自分でも、誰かの役に立てば、こんなに喜んでもらえるんだと実感できる

 こんな経験をしたときに、あなたはきっと幸福感を感じるはずです。

 ありのままの自分を受け入れ(自己受容)、信頼する仲間との間に所属感を共有する(他者信頼)。そして、自己犠牲を払うことなく、信頼する仲間のために役に立ち貢献感を得られたとき(他者貢献)、こんな自分でも信頼する仲間のために役立てることを実感し、さらに、自己受容の気持ちが高まる。

 こうした好循環のサイクルを感じられる状態が、アドラーが唱える【幸せの3条件】を満たした状態です。

 このアドラー心理学【幸せの3条件】をグルグルと回していくことは、子育てにおける【子どもの自立】と直結しています。つまり、子どもが「自己受容 → 他者信頼 → 他者貢献」という好循環のサイクルを感じながら日々を過ごしていくこと自体が「自立していく」過程そのものである、ということです。

 愛する子ども達に、自分の「在り方」「生きざま」をもってこの【幸せの3条件】を伝えることができ、子どもがそうした親の姿を「お見本」としてまねしながら成長していくことができるとしたら、とってもステキなファミリーになれるとは思いませんか?

 さあ、このコラムも次回から後半戦に移ります。次回からは、十分に自分を勇気づけるすべを身に付けた皆さんが、周囲の信頼すべき仲間(パートナーや子ども、仕事の仲間やコミュニティーの友達など)を勇気づける人になる方法について一緒に考えていきます。

【参考文献】
 ●アドラー・子育て 親育てシリーズ 第1巻 育自の教科書 ~父母が学べば、子どもは伸びる~(熊野英一 / アルテ)
 ●アドラー心理学教科書 –現代アドラー心理学の理論と技法- (監修 野田俊作 編集 現代アドラー心理学研究会 / ヒューマン・ギルド出版部)
 ●7日間で身につける! アドラー心理学ワークブック(岩井俊憲 / 宝島社)