連載「黒田優佳子先生の優しい生殖医療講座」第7回です。不妊治療専門施設の黒田インターナショナル メディカル リプロダクション(東京都中央区)院長の黒田優佳子先生に、タイミング療法について詳しく聞きました。

タイミング療法は自己流ではなく、専門家の力を活用してほしい

黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長・黒田優佳子先生
黒田インターナショナル メディカル リプロダクション院長・黒田優佳子先生

日経DUAL編集部 今回は、排卵日ピッタリに性交を取るタイミング療法について教えてください。

黒田先生(以下、敬称略) どんなに生理が規則的で、どんなに排卵が安定している女性でも、毎月の排卵日がピッタリ同じ日になる、という訳にはいきません。

 ベストな排卵の条件は、そのときの精神と肉体の状態で常に変化します。ストレスがたまっていて体も疲れているとか、逆に精神的にも潤っていて元気なときとか……、排卵のタイミングにはそういった心身の状態によって微妙にずれが出てきます。ですから繰り返しになりますが、規則的な28日の生理周期の真ん中に当たる14日目が必ず排卵日である場合が多いという“教科書的なリズム”の女性でも、様々な要因により、排卵のずれが生じてしまうのです。

 積極的に妊娠を希望される女性の中には、基礎体温を測定されるなどして、ご自身で排卵日を推定し、少しでも妊娠しやすいタイミングで性交渉を取るようにされておられる方もいらっしゃいますが、なかなか妊娠されない場合には不妊治療専門クリニックを受診して、専門家によるアドバイスをお受けいただくことをおすすめします。

 ご自身で「排卵日はこの日」と、事前に100%正確に予測することは大変難しいことです。だからこそ、正確な排卵日を見極めるためには専門家による丁寧な診察の下で予測していかないといけません。

―― 「排卵日がこの日」だと事前に予測することはできないのですね。何だか、目隠しした状態で性交渉しなくてはいけない、というイメージのように聞こえます。

黒田 そうなんです。ですから、自然の性交渉で赤ちゃんを妊娠できたというのは、本当に本当にありがたいことなのです。奇跡的で、本当に幸せなことです。卵子形成も、肉体も、精神も安定し、精子の質(機能)もいい。そういった条件が整ったカップルだからこそできることです。

 イライラしていたり、例えば、不妊治療中であれば夫や主治医に対する不満があったり、お金のことを気にしながらとかだと、たとえ、体内で良い卵子や精子ができていたとしても、いい妊娠には達しないと私は思っています。二度と同じ排卵は来ない、予測することが難しいわけですから、自分達で排卵日だと思って性交渉を取って妊娠できたのならば、不妊症ではない幸せな方であって、二人で頑張っているのに妊娠しないのならば、何らかの不妊症だと思ったほうがよいでしょう。