受精のチャンスは、精子と卵子の出合いから半日間のみ

―― 受精したかどうかは、性行為の翌日にはまだ分からないのですか?

黒田 そのタイミングではまだ分かりません。性行為後、だいたい10日くらいで判定できます。血液検査により、受精して着床している可能性があるか否かが分かります。ただ、受精して着床しても、そのまま順調に妊娠が継続して、その受精卵が最終的に健康な赤ちゃんとして生まれ出てくるかは、その段階の血液検査では分かりません。

―― 排卵される時間帯には、朝が多い、夜が多いといった傾向はあるのでしょうか?

黒田 それは分からないのです。

―― では、受精する可能性があるのは、排卵後、どのくらいの時間ですか?

黒田 それにも個人差があります。分からないと言ったほうが正しいです。本来は排卵の直前に性行為の指示をすることが望ましいですが、排卵の直後に性行為の指示をして妊娠する方もいらっしゃるので、だいたい半日くらいは大丈夫だと思います。

―― 受精のチャンスは、排卵後の半日間……。妊娠というのは、本当に奇跡的なことなのですね。

黒田 一部のご夫婦では、体内に入ってきた精子を攻撃する「抗精子抗体」が女性の体内に形成されてしまい、不妊につながる場合があります。それを考慮すると、性行為で赤ちゃんをつくるということは頭を使って的中率を上げなければなりません。不妊治療の場合は、あまりムーディーではないのですが、ある意味で割り切って正確に排卵日を推定できる専門家の元を訪ねて、タイミング指導を受けたほうがいいのです。

 ただし、この治療には、やはり男性のメンタルの部分が非常に影響してきます。「このタイミングだ」と割り切って、性交渉を取れる方はいいのですが、「今日頑張らなくては」と言われることで心因性インポテンツになってしまう場合もあります。そこが難しいところです。

―― そうですよね。

黒田 精子と卵子が出合って受精する可能性のある時間は、先ほどはだいたい半日と申しましたが、やや長めに見積もって、大体17時間くらいだといわれています。

―― その間は、女性の体の中でいろんなことが起こっているのですね。もしかしたら命が生まれているかもしれないし、生まれていないかもしれない。

黒田 そうです。その時間内に命が生まれなければ、精子も卵子も要らないものとして白血球などの貪食(どんしょく)細胞に食べられてしまいます。

―― 大事につくられた卵子も精子も、その短い時間内に受精しているか、ぱくっと食べられているかのどちらかなのですね。やはり生命の誕生は、サバイバルゲームなのだと感じます。

黒田 そうですね。先ほど申し上げた通り、積極的に妊娠を希望される場合には、基礎体温などを参考にして、ご自身で排卵日を推定して性交渉を取られても妊娠されないのならば、最初の段階で専門家の力を借りて、賢い性行為を取っていただきたいと思います。

(取材・文/日経DUAL編集部 小田舞子、撮影/鈴木愛子)