生理開始後、エコー画像と血液検査で卵子の成長を間接的にチェックする

―― 不妊治療専門クリニックのタイミング療法は、具体的にどのような治療をするのでしょうか?

黒田 女性の患者さんの生理が始まったら、クリニックにいらしていただきます。生理の2~3日目から排卵日まで細かくデータを取っていきます。まず生理中にエコー画像を見ながら、内膜が脱落しているか、卵子が入っている卵胞という袋があるかといったことを確認していきます。さらに、血液検査を行い、卵子形成に関わる種々のホルモンの血中濃度を測って、エコー画像で確認できた状態に見合った値が出るかどうかを確認します。

 生理は通常1週間前後で終わりますよね。その後は、今度は頸管(けいかん)粘液、つまりねばねばした透明なおりものが女性ホルモン由来で増えてくるので、その増え方を観察します。

 同時にエコー画像では、卵胞が大きくなり成熟卵胞になっていく過程を見て、いい卵子が育っているかどうかを確認し、血液検査では卵子の成長を示すホルモン値の上昇を見て、「恐らく卵子が育っているだろう」と推測し、「明日とか明後日が排卵日であろう」という予測を立てます。

 排卵が近づくと、お胸が張ったり、腰が張ったり、排卵痛があったり……という自覚もありますが、それも実は単純ではありません。排卵痛にしても、排卵日ピッタリに自覚される方ばかりではないのです。排卵の前に自覚する方もいらっしゃいますし、排卵の後の方もおられます。同じ方でもコンディションは日々変わります。排卵の前後で疲れていたり、リラックスしていたりといった条件の変化によって、通常は排卵痛を排卵より前に感じるタイプの方でも、後から自覚することもあります。

 そのため、自覚症状を頼りに性交渉を取られても、やはり排卵日ピッタリといかない場合が多々あるのです。多少ずれても、精子と卵子と子宮内環境が見事にいい方は、自然の性交渉で赤ちゃんを妊娠できる場合もありますが、排卵に近いタイミングで性交渉を取っているのに妊娠が成立しない場合には、精子の質(機能)が悪いとか、卵子の形成が十分でないとか、何らかの問題があると考えたほうがいいのです。

―― では、不妊治療専門クリニックで、2~3日後の排卵が予測された場合には、どういった指導をされるのでしょうか?

黒田 「予測される排卵日に、可能であれば性交渉を取ってください」と指導します。それが難しければ、性行為が取れるタイミングを伺い、ホルモンを補充して排卵を早めたりと、あくまで自然妊娠を期待させつつ、少しお手伝いをさせていただきます。

 そして、性交渉をされた翌日か翌々日にいらしていただいて、エコー画像で卵胞(卵子が入っている袋)が破けて排卵が行われたかどうかを確認するとともに、血液検査をして血中ホルモン値からも排卵のタイミングが合っていたかどうかをチェックします。