親の言葉を変えるのに必要なのは心の準備と心がけだけ
──小学校入学を前にして、ついつい焦って忘れがちになりそうなところだと思いますが、他にも否定的な言葉を発してしまうことによる悪影響はあるのでしょうか?
親野 いつも否定的な言葉を浴びせられている子どもというのは、親に対しても不信感を持ってしまいます。「お母さん(お父さん)は、ボク(わたし)のことが嫌いなのかも」となってしまいます。これは、愛情不足感から、親に対する不信感へとつながってしまうのです。そうなると、ますます頑張れない子どもになってしまいます。
さらに、親の愛情不足感を抱えている子どもというのは、親以外の他者に対しても不信感を持つようになってしまいます。新しい人間関係を築くうえでの第一歩となる小学校入学というひとつの節目に、そういう他者不信感を持つようになるのは、よくないですよね。
他者不信になってしまうと、先生はもちろん、友達ともいい関係が築けなくなります。そういう子どもは、例えば、廊下で子ども同士でポンと肩がぶつかったりするだけで「ぶつかってきやがって、やる気か!?」などと、トラブルを起こしかねません。
こうなってしまうと、なかなか友達関係もうまくいかなくなって、被害妄想的にもなるので、さらに攻撃的になってしまい、ケンカも多くなってしまうのです。
そう考えると親の言葉は、非常に大事だと分かりますよね。子どもにとっての環境というのは、親がつくり出すものです。他にも影響を受けるものはありますが、やはり大半は親の言葉なのです。そこに気づかないで、親の言葉がいつも否定的なものばかりだと、子どもの心はボロボロになってしまいます。
また、子ども自身の言葉も否定的になってしまいます。親がいつも「また○○していない、ダメでしょ!」「片付けしないとおやつ抜きだよ!」などと言っていると、それを丸ごとコピーして友達との会話に使うようになります。「○○しないとダメじゃん!」とか、「○○しないと、遊んであげない」となってしまうのです。
──多くの親にとってドキっとする話ですが、否定的な言葉を発しないで褒めてあげることを意識するだけでも変わりますよね。
親野 入学前の最大の準備は、まず「親の言葉を変えること」だと言っても過言ではありません。こういう話を、親はなかなか入学準備だと思わないんです。入学準備といえば、数を数えたりだとか、足し算はどこまで、平仮名はどこまでかといった学習面のことばかり気にしがちです。もちろん、そうですが、それよりもっと大事なのは、実は、親の言葉を変えるということなのです。
もう一度、言いますが、入学準備のための最大のポイントは、親の言葉を変えるということ。親が否定的にとがめるのではなく、肯定的に褒めてあげる。共感することを忘れずにいれば、子どもの言葉も自然と肯定的なものになりますし、自己肯定感も高くなって、他者信頼感に満ちた子どもになります。そういう子どもというのは、だいたい友達関係もうまくいくものです。
この話を聞いてドキっとした親の皆さんは、今すぐにでも直していただきたいですね。言葉というのは、決意すれば直るものですから。心の準備と心がけ次第だと私は思います。