共感的に子どもの話をジックリ聞いて“情報”を仕入れる

──小学校に上がると、いよいよ自立に向けた第一歩が始まるイメージがありますが、幼児返りされたら、ますます心配になりそうです。

親野 入学して1カ月くらいしてから授業参観に来られた保育園や幼稚園の先生が、保育園や幼稚園のときよりも幼く見えるとよく言います。上級生は新1年生の面倒を見るのがうれしいものだから、何かと世話を焼こうとするので幼児返りみたいなことが起こるのですが、それも普通のことだということをお伝えしておきたい。「これで大丈夫なんだろうか?」などと、不必要に心配することはありません。

 入学当初はグズグズするものですし、「疲れちゃった~!」などとよく言うようにもなるので、家ではリラックスさせてあげる。あまり学校のことも根掘り葉掘り聞かないほうがいいでしょう。

 とはいえ、元気そうだなというときがあれば、逆に聞いてみるのもいいでしょう。きっと、色々と愚痴をこぼすはずです。友達がどうのこうのとか、先生に叱られちゃったとか。ただ、そういうときにしてはいけないのが、「ちゃんと先生のお話を聞いてないからでしょ」などと突き放すような反応を親がしてしまうことです。

 「そうだったの、嫌だったね」などと、“共感”しながら聞いてあげる。そうすると、子どもはたまっていた愚痴をこぼすことができる。親に聞いてもらって共感してもらえると、子どもは気持ちがスッキリして、ストレスを解消することができます。

 共感してもらえると子どもはたくさんしゃべるので、「ああ、そういうことか」と分かる。子どもの情報が本人から得やすいですよね。ジックリ聞いてあげることで、「友達関係が心配だな」とか、「先生との関係が心配だな」など、親としてどうすればいいかが見えてくることもあります。

 ところが、「ダメでしょ、それじゃあ。もっとしっかりしなきゃ!」などと門前払いをしてしまうと、子どもは話せなくなってしまい、それ以上の情報が入らなくなってしまいます。親は共感的に話を聞いてあげるということが、非常に重要です。

──保育園や幼稚園のときと比べると、小学校でわが子がどう過ごしているのか見えなくなることが多くなり、とんでもないことをしていてビックリしたという話もよく聞きます。上履きを忘れてしまい、そのまま1週間、靴下だけで過ごしていたとか……。

親野 それは、子どもによると思いますが、そういう話はよくあることです。だいたい、保育園や幼稚園のひとクラスよりも人数が増えますし、先生が見る人数が当然、増えますから。保育園や幼稚園のときよりも目が行き届かなくなることは、どうしてもあります

 それだけに、子どもの話をシッカリと聞いて、情報を仕入れることが大事です。それとともに大事なのは、先生とのコミュニケーションです。気になることや心配事があるなら、連絡帳に書いたり、直接、先生に電話をして聞いたりしたほうがいいでしょう。

 ただ、ここで注意していただきたいことは、連絡帳の書き方や電話のかけ方です。「息子(娘)がこう言っているんですけれど、どういうことですか!?」と詰問する感じで連絡帳に書いたり、電話したりする親がときどきいます。こういう場合には、当然、大人のマナーをわきまえてコミュニケーションを取ったほうがいいと思います。

 「いつもお世話になります」とか、「先生に受け持っていただいて、子どもは毎日、楽しいと言っております」とか(笑)。そういった話から入っておいて、「実はこれこれこういうことを言っているんですけど、どうなんでしょう?」とか「こういうことが心配なんですけれど」とか。前置きが何もなく、いきなり本題から入ってしまう。すると、やはり先生も人間ですから、この親はどういう人なんだろうと、身構えてしまいますよね。一般的な大人のマナーは、学校においてもやはり、必要なのです