人間ドックで卵巣がんが見つかった産業カウンセラーの太田由紀子さん。子宮と卵巣を全摘出する手術を受けた後、今度は予防のための抗がん剤治療が始まります。中学2年生になる上の娘さんには「相談」というかたちをとって話をした太田さん。小学5年生の下の娘さんに話す機会を探るうちに、抗がん剤治療を始める日が近づいてきます。手術を経てステージⅠcと診断されるまでを中心に伺った前回の記事に続き、今回は抗がん剤治療を終えるまでと、家族との関わりについて聞きました。

体中が嫌がる理不尽な治療

日経DUAL編集部 ステージⅠで、卵巣を全摘しても、抗がん剤治療をしなければ、本当に1年以内に再発する可能性が高いのでしょうか。

太田さん(以下、敬称略)どうなんでしょうか。私もまだ怖いんです。手術をして1年経っていませんから。卵巣がん体験者の会スマイリーが主宰したフォーラムでショックを受けた発言がありました。患者の一人が話していたのです、「ステージⅠcで抗がん剤治療を受けましたが、再発しました」と。つまり、彼女が使っていた抗がん剤が効かなかったということです。

 抗がん剤治療は6月4日から始まりました。ごく基本的なTC療法といって、病院に2泊3日入院して2つの抗がん剤を点滴で受ける、という治療を3~4週間空けて6回繰り返しました。

 私が使ったのは、カルボプラチンとパクリタキセルという2つの抗がん剤です。卵巣がんのこの2つの薬に関しては、点滴を受けている間は体がホカホカして少し眠くなるくらいで、特に気持ちが悪くなったりはしません。治療中の友達のところにお見舞いに行ったりしました。

都営地下鉄駅や都営バス営業所で配布しているヘルプマーク。外見で分からなくても援助や配慮を必要としている人が周囲に知らせやすいようにと作成された。太田さんも体力の落ちる抗がん剤治療中に、見えるようにして電車に乗ったが誰にも気付かれず、まだまだこのマークの認知度が低いことを実感したという
都営地下鉄駅や都営バス営業所で配布しているヘルプマーク。外見で分からなくても援助や配慮を必要としている人が周囲に知らせやすいようにと作成された。太田さんも体力の落ちる抗がん剤治療中に、見えるようにして電車に乗ったが誰にも気付かれず、まだまだこのマークの認知度が低いことを実感したという

 2泊3日を終えて家に帰り、一晩寝て次の日からが地獄です。特に一番最初と6回目がきつかったです。体中痛いんです……ズキズキかなあ、今まで感じたことのない痛みで、ここが痛いというのではなく、体中、内側から嫌がっている、という感じです。嫌で痛くてたまらない。本当につらいです。 

 いくら家族に言っても仕方ない。一人耐えるしかありません。それが2日くらい続きます。私の場合は、しびれもすぐに出ました。手の先と足の先が痛みとしびれで感覚がないような感じです。食事もしばらくはしたくない。

 それが2日くらいでしょうか。気持ち悪いのはしばらく続きますが、寝たきりではありませんでした。倦怠感はずっとあります。

 自分の体がいくらか元に戻るまでが1週間、その後1週間後から2週間目くらいまでは薬が血液中の白血球と血小板を壊す骨髄抑制というのがあるんです。白血球が少なくなると感染しやすくなるので、外に出られません。また血小板の数値が落ちると、血が止まらなくなります。

 ないかもしれないがんのために体中壊されていて、理不尽な感じでした。一言で言うと、理不尽な治療です、これは。