8センチ大のチョコレート嚢腫が見つかった

―― そして今回のエコー検査で…。

太田 今回の人間ドックで私はエコー検査を受け、「大きな腫瘍がありますね」と言われました。「ここですね、8センチくらいあります」と画像を見ながら先生がおっしゃいます。「何ですか」と聞いたら「血の塊です。紹介状を書きますので婦人科になるべく急いで行ってください」とのこと。先生方にとっては珍しいことではないのかもしれませんが、私にとっては初めてのことでしたからもうびっくりしてしまって、「もっと詳しく教えてください」と頼みました。

 人間ドックですからあまりそういう患者さんはいないのだと思いますが、診察室で詳しく聞きました。卵巣の中に血の塊ができていてそれをチョコレート嚢腫と呼ぶこと、そのチョコレート嚢腫が今8センチになっていること、それが捻転を起こしたり、破裂したりすると危険だということ。そして、3週間後に出る人間ドックの結果を待っていると間に合わないかもしれないので、すぐに専門の婦人科医のところに行くように、というのです。もう頭の中は大パニックでした。

 4日後、出産をした近くの婦人科で診察を受けたところ、「チョコレート嚢腫だったら腹腔鏡の手術で取れます」と言われました。チョコレート嚢腫だけならば、がんではありません。腹腔鏡手術は負担の少ない手術で、3カ所ほどを切って嚢腫を出すというのです。「多分その手術で大丈夫でしょう。ただMRIを撮りましょう」と言われました。先生はその時点では人間ドックのレントゲンの検査結果なども手元にない状態でした。

 少しほっとして、家に帰って娘達には「簡単な手術で、おへそからヒュッと出してしまえばおしまいだって」と喜んで話をしたくらいです。MRIは少し離れたところにある専門の病院で3日後に撮ることになりました。

「悪い顔をしています」の衝撃

太田 3月6日、検査結果は患者ではなく病院に届くので、その検査結果を聞きにまた地元の婦人科に行きました。部屋に入るなり「残念ですが」と言われました。

もう予期もしていなかったことでした。チョコレート嚢腫の一部分が「悪い顔をしています」と言うのです。「は? どういうことですか?」と聞いたら、「悪性の可能性があります。あくまでも可能性です」と言われました。

 「がん」と言われたわけではないんです。だから最初はピンとこなくて「え、悪性って……?」という感じです。卵巣がんの場合、実際に手術が終わるまで、がんかどうかが分からないから、先生は確実なことしか言わないのだと思います。

 とにかく系列の大学病院に行ってすぐに診てもらったほうがいいと言われ、「すぐに紹介状を出します。予約も取りましょうね」と言われたのですが、途中から頭が真っ白になっていて、何も耳に入っていませんでした。「え、もう一回言ってください」と頼んだら、ようやく先生が「この患者、ちょっとパニックに陥っている」ということが分かったようです。