中学2年生と小学5年生の2人の女の子を育てながら、産業カウンセラーとして相談業務をしている太田由紀子さん。職業柄なのか、筋道立てて整理された話は分かりやすく、よく響く声はほっと安心するように柔らかく、落ち着いて見えます。とても「ワアワア泣きながら帰る」姿など想像できません。でも1年ほど前、太田さんは文字通り泣きながら病院を後にしました。
 きっかけは2015年2月に、2年半ぶりに人間ドックを受けたことでした。「腰痛がひどいな、おなかのあたりに肉がついたな、やっぱり年かな」……そんなふうに思っていた矢先に下った診断は、卵巣がん。それから1年、太田さんが文字通り怒とうのように過ぎていった日々を振り返ります。

腰痛やおなかが出てきたのは年のせい?

日経DUAL編集部 がんは怖いけれど、心のどこかで「まさか自分が」と考えていて、なかなか「自分事」としては捉えられません。怖くて考えたくないのかもしれません。

太田 私もまさに、寝耳に水でした。周囲にがんの人は全然いなくて、ぽんと崖から落とされた感じです。

 順を追ってお話をしますね。2015年2月23日、私は人間ドックを受けました。普段は産業カウンセラーとしての業務の他に雑誌でコラムを書いたりしていて、フルタイムで会社勤めしているわけではないため、健康診断の機会がないのです。

 ただ、2014年の秋くらいから、腰痛がひどくなっていました。寝ても起きても腰が痛い。起きるときは特に痛いのですが、しばらくすると動けるようになるので、年齢のせいだろうと思っていました。すごく疲れやすくなったとも感じていました。さらにもう一つ、おなかが出て引っ込まなくなったんです。やはり「ああ年なんだな、運動不足かな」と思っていました。

 ただ、どちらも何となくイヤな症状でした。ですから、お医者さんに診てもらいたいなとは思っていたのですが、何科にかかればいいかが分からない。腰痛は整形外科? おなかが出てきたのは内科? そこで、ちょうど2年半も間が空いてしまっていたから、全身を診てもらったほうがいいと思い、人間ドックにしたのです。

―― そんなふうにちょっとした不調を抱えている人は多いのかもしれませんよね。人間ドックは婦人科検診も付けたのですか。

太田 何となく気になっていたので、婦人科検診では超音波検査(エコー)をオプションで付けました。触診だけでは分からないことが多いといいますよね。私の場合、2年半前の人間ドックでもやはり婦人科検診でエコーを受けて、子宮内膜症が見つかっていたのです。このときは「腫瘍などは見当たらないが再検査してください」と言われました。そこで出産をした産婦人科に行ったところ、「軽度の子宮内膜症です。経過観察し、つらくなったらまた来てください」と言われました。

写真はイメージです
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