1月に実施された千葉・埼玉入試を皮切りに、東京・神奈川では2月1~3日をピークに繰り広げられた2016年度の首都圏中学受験。「第一志望の合格を手に入れた」「かなわなかった」……、それぞれの結果が出たことと思います。2016年度の中学受験を俯瞰すると、どんな傾向が読み取れるのでしょうか? 男女御三家を中心とした難関校の入試問題の中身や最新のトレンドについて、本連載でおなじみの西村則康先生にご解説いただきました。

開成・武蔵・桜蔭・筑駒の理科入試に変化があった

 「前年度はサンデーショックによる影響で女子難関校の受験に混乱がありましたが、2016年度は例年通りに戻りました。男女御三家をはじめとする難関校の入試は相変わらず難易度が高く、単に知識があるだけでは太刀打ちできないような、思考力や応用力を求める問題が出題されました」

 「前年に比べて難しくなったのが理科と社会です。もともと高得点勝負といわれる難関校の理社ですが(参照:「中学受験 はっきり言って『理科は高得点勝負』」)、今年は例年に見られないような問題も出題されたため、理社で合否が分かれた人もいるのではないでしょうか」

 では、どのような問題が出題されたのでしょうか?

画像はイメージです
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 「まず、注目したいのが開成の理科です。これまでは開成の理科は4科目の中では最も易しく、確実に8割を超える点数を取ることが合格の条件と見られてきました。今年度も内容においては易しいものでしたが、大問【3】は実験結果からの考察問題、大問【4】には電気回路についての会話文が登場するなど、これまでなかった出題スタイルに戸惑った子が多かったのではないでしょうか? こうした問題は、これまで麻布や武蔵では頻繁に出題されていましたが、開成では珍しいスタイルです」

 「会話文による問題は、筑波大学附属駒場中でも、今回初めて登場しました。また、女子御三家の中では比較的易しいといわれている桜蔭の理科も、従来の知識問題のみならず、実験結果に基づいて答えを導く“麻布傾向”の問題が出題されました(参照:女子御三家『桜蔭・女子学院・雙葉』校風と入試傾向)」

 「こうした問題を出す意図として、問題文を丁寧に読み、条件や仮定、そして結果をしっかり捉えることの重要性と、知識を活用して主体的に学ぶ『アクティブラーニング』を意識したいという学校側のメッセージを感じ取ることができます」

 一方、武蔵の理科といえば、ものや道具を観察して分かったことを自由に記述する「おみやげ問題」が有名です。ところが、2016年度の理科入試では、そこにも変化がありました(参照:「男子中学御三家『開成・麻布・武蔵』校風と入試傾向」)。

 「今年は星座早見盤をその場で組み立てて利用させる問題が出題されました。知識も必要ですが、手を動かさなければ、答えを導くことができないという内容でした。例年であれば、気づいたことを記述すれば点数を確保できましたが、今後は、より厳密な論理的思考が求められるようになるのではないかと思われます」