両親の関係と、私達夫婦の関係は似ている
―― 映画では、同僚に「小さいお子さんを残して働いて、後悔しない?」と聞かれて、悩ましい表情をするシーンもありましたね。
西野 出産後に復帰するという決断は、働く母を見て育ってこなければ、多分貫けなかったと思います。働く女性として自分の道を貫いた母が手本を見せてくれていたからできたんでしょう。妊娠中も出産後もバレエを続けたことは、結局母から受け継いだ精神ゆえですね。親の背中を見て育ったから、自分の好きな道を選び、頑張り続けられるんです。
―― お母さんが働く女性のお手本だとしたら、お父さんから教わったものは何でしょう。
西野 理想の旦那様像でしょうか(笑)。父は言葉数こそ少ないですが、とても優しい人。家事も何でもできる人です。私と母は性格がとても似ていてにぎやかなので、父はいつもその陰に隠れてしまうんです。
もし父が何もできない非協力的な人だったら、私の家庭観、仕事観も違ったでしょうね。15歳で英国ロイヤルバレエスクールに留学したいと相談したときも、父は最初こそ驚いたけれど、私の意志が強く、本気だというのをすぐに察してくれました。父の理解がなければ、ここまで来ることができませんでした。
語学もろくにできない娘を海外に出すという父の決断は、大変なものがあったと思います。高い授業料を払うために、家を売り、車を売ってくれました。母と私は、きっと父がいないと、どこかに飛んでいってしまう(笑)。父がいてくれるから、いいハーモニーを奏でられる。力強い、なくてはならない味方ですね。すらっと背が高く、優しくて面白くて、家事もできて。「将来、パパみたいな男の人と結婚したい」と幼稚園とか小学校の作文にも書いていましたよ。
―― ニコライさんとお父さんは似ていますか?
西野 似ているところがありますね。両親の関係と、私達夫婦の関係は似ていますし。夫はすごく優しくて、私のことをよく理解してくれます。育児も家事もたくさん助けてくれます。ここでも私の夢はかなっていますね。
――次回の記事では、留学中つらかったときに母に教わったこと、息子に伝えていきたいことなどをお届けします。
(文/牧口じゅん)