外資系企業でも、日系企業でも、実は働き方に大差はない

 私が彼から期待されていることは、契約書に明示されています。「外資はジョブディスクリプションがはっきりしている」と思っていたら、意外にそうでもなく、「こんなことをしてほしい」という要望は随時寄せられます。

 外資といってもスタートアップ企業なので状況はどんどん変化します。そういう中、「ジョブディスクリプションに書いていないことはやりません」という態度ではダメで、やはりゴールを共有した者同士、できる限り頑張る、という姿勢や、お互いの信頼は必要です。

 そう考えると、「日本のホワイトカラーの仕事に近いなあ」と思えてきます。目標の共有とか、信頼といったような、不定形な仕事をチームで進めるときに必要なことは、外資も日本企業も差はないのかも……。いずれにしても、彼らと一緒に働くうちに、「日本のホワイトカラーの仕事だって、もっと柔軟にできるはず」という思いが確信に変わってきました。

 あえて社名を挙げませんが、テレワーク(が許可されない理由)について話をすると、日本のそうそうたる企業の問題点が浮かび上がります。ある人は、日本を代表するテクノロジー系企業の研究部門に勤務していました。その部門はフレックス勤務ができることになっていましたが、他の部署はフレックスではないので、その部署の人だけフレックスだと「ずるい」という理由で、他の皆と同じ決まった時刻で働いていたと言います。

 頭脳勝負で働く人達が、他部署の嫉妬のせいで縛られた働き方をせざるを得ないとは……。この企業は新しい製品やサービスを生む発想より、社会主義的な平等を重視しているのでしょうか。

「セキュリティー管理の厳しさ」の正当性も、一度は疑ってみる

 「うちの会社(業界)はセキュリティー管理が厳しいから、テレワークもフレックスも無理」という話も、よく聞きます。ただ、そのセキュリティーは本当に必要なものなのか、考える必要があります。単に監督官庁が惰性で縛っているだけではないのでしょうか。多様な人の能力を活用することより、ガラパゴスなルールや規制のほうが大事なのでしょうか。試しに、外国にある同業の会社と比べてみると、驚くほどフレキシブルに働いていることがあります。

 冒頭に記した雪と雨で交通が乱れた日の午後。研究員として所属している女子大で、就職先としておすすめの企業に関する調査報告会が開かれました。管理職に占める女性比率、フレックス制度の有無などデータを基に分析した調査です。

 私は自分の報告をする際、思わず「ここに書かれている制度だけでなく、今日、こういう日に、3時間、4時間かけて通勤することが当たり前ではない企業、こういう日は自宅で作業することが当たり前の企業が、本当の意味で男女ともに働きやすい企業です」と言ってしまいました。参加した女子大生に意図が伝わっていることを祈りつつ。