「豊かな生活とは」の自問自答を続け、震災を機に決断
「豊かな生活って何だろう」
木島さんがそんな考えを抱き始めたのは、およそ10年前。企業派遣でオランダに留学していた当時、隣人が毎日17時までに帰宅し、家族と夕食を取る生活を送っている様子を見たのがきっかけでした。漠然と考え続ける中で、友人が岡山に移住して農業を始めていることを知りました。
「友人はかつてバリバリのコンサルタントだったので、正直、無謀なことをしたものだ、と思っていました。けれど、家族で遊びに行ったとき、豊かな暮らしぶりに衝撃を受けたんです。スーパーもコンビニもない山の中だけど、朝は摘みたての野菜や産みたての卵が食卓に並び、足りないものがあれば近所の人と交換して分けてもらう。『こんな生活もできるんだ。いつかは自分達も…』と思うようになっていました」
そうはいっても、「地方には仕事がないのでは」「収入も激減するだろう」という不安から行動を起こせずにいた木島さん。背中を押したのは東日本大震災でした。交通機関が止まり、携帯電話もつながらない。自宅まで6時間かけて歩く中、考え続けました。
「昨日まであったものが今日には無くなることもある。先延ばしにしていてはいけないという思いが強くなり、転職活動に踏み切りました」
次ページでは木島さんの「転職にかかった時間とお金」「面接の攻略法」「転職して捨てたもの、得たもの」などを紹介します!