男性国会議員として初の「育休取ります」宣言で注目される、自民党の宮崎謙介衆議院議員。妻の金子恵美衆議院議員(自民党)は切迫早産と診断され、自宅で療養していましたが、2月5日に無事ご長男を出産されました。宮崎議員は職務の傍ら、洗濯、掃除、料理と家事を積極的に行っているといいます。
 政府は2.3%程度(2014年度統計)にとどまる男性の育休取得率を、2020年までに13%へ引き上げる目標を掲げています。今回の宮崎議員の育休宣言では「よく言ってくれた」という声も聞こえる一方で、「国民の代表である国会議員が育休を取るのは不適切」との反対意見も多く、与野党を巻き込んでの議論となっています。
 そんな育休問題の渦中にいる宮崎議員に、同世代であるNPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんが会いに行き、対談した内容のリポートをお届けします。

※本記事は、取材当時(2016年1月25日)の内容です。
※※宮崎謙介氏への駒崎弘樹氏インタビューを前後編で配信する予定でしたが、宮崎氏の女性問題と議員辞職発表を受けて、インタビュー後編は公開しないことと致しました。ご了承ください。(2016年2月12日 日経DUAL編集部)

【育休問題の経緯】
 2015年12月23日、宮崎謙介衆議院議員が約1カ月の育休を表明した。党内、野党からはすぐに賛否両論の声が次々と上がり、国会会期中に育休を取ること、衆議院の規則に出産休暇はあるものの育児休暇の規定がないこと、国会議員が育休を取る間は議員の給与に当たる歳費が全額支給になることなどを巡る議論へと発展した。育休中の歳費支給については、宮崎議員は「選挙区以外の事業所で活動をされている福祉団体へ手取り額の全額を寄付しようと検討しています」としている。

実は、政治家にDUAL層の声は届いていない

駒崎弘樹さん(以下、敬称略) 宮崎さんとは、実はだいぶ昔にお会いしたことがあるんですよね。 

宮崎謙介議員(以下、敬称略) そうなんです、あれは13年ほど前だったかと思います。僕は日本生命に入社したばかりの新入社員で、駒崎さんの学生時代の友人という優秀な先輩が、「キャリアのビジョンが見えない」と悩む私に「面白いやつがいるよ」と紹介してくれたんです。3人でバーで話をしたとき、私の思考があまりにまとまっていなかったのを見抜いて、駒崎さんがきっちり整理してくれ…。「鉄が好き?」「いや、鉄は好きじゃないです」「食品は?」とか色々話していくうちに「人が好きなんじゃないの?」と駒崎さんに言われ、改めて自分の人好きを認識したんです。「人材分野でキャリアを築くことを考えようかな」と。結局、インテリジェンスという人材派遣会社へ転職し、その後、ITベンチャーも経験して独立。そして、あのときのアドバイス通りに、人が好き過ぎて、政治の世界にたどり着いた感じです。

駒崎 全く覚えてないですが(笑)、お役に立てて何よりです。今はおいくつですか?

宮崎 35歳になりました。

駒崎 僕が36歳なので、同年代ですね。さて今回の育休騒動、僕はイクメンプロジェクト推進委員会の座長を務めていて、男性の育休を盛り上げていこうという立場なので「これは面白い人が来た」と思いました。1月18日のファザーリングジャパン主催の緊急フォーラム「どうなる?議員の育休?」でもこの話題は大盛り上がりでしたね。参加者はみな宮崎議員を応援し、期待を感じられましたが、いかがでしたか?

宮崎 サイボウズの青野慶久社長や文京区の成澤廣修区長など様々な方からアドバイスをいただいて励まされました。あの場にいた方々は、私がいつも参加する自民党の集会などではあまり会わない方々なんですよね。フォーラムを聞きにいらした方々は、町の公民館などで車座になって支持者と話し合うような集会にはいなくて、駅前で演説をするときに接点があるだけ。通りすがるだけでまともに会話できる機会はあまりないんです。

駒崎 それって、面白い視点ですよね。政治家が普段コミュニケーションをしている人達は、いわゆる我々DUAL層ではない、政治家の視野にDUAL層は入っていないんだということを読者は認識したほうがいいですね。

宮崎 支持者は地域密着の保守層が多く、政治もそういう方々のほうを向いています。若年層とか子育て世代の声は届きづらいし、予算も確保しづらいということにつながっていると思います