女性の雇用拡大が国家プロジェクトになっている今、保育園の待機児童問題解消が急ピッチで進められています。しかし、施設整備の遅れや、現場の理解不足などで、職場復帰を妨げられ、キャリアチェンジを余儀なくされるワーママがまだまだ多いというのも事実。そんなママ達が、何をきっかけにどのような選択をしてきたのか。生の声をお届けします。

【あらすじ】会社員の夫と4歳の娘を持つ長岡美穂さん。大学を卒業後、環境系シンクタンク、政府系研究開発機関を経て、外資系戦略コンサルティングファームのコンサルタントに転身されたという経歴の持ち主です。こと自身の“保活”に関しては思い通りにはいかず……。保活と再就職活動を並行して行う中で、女性が社会で活躍し続けるための社会インフラの貧弱さを実感します。「出産・育児を経て、再度社会で活躍したいと思う女性がチャレンジできない社会はおかしい」。怒りをパワーに変えて突き進む、ママ起業家のストーリーです。「待機ママ 35歳で第一子を産むため、逆算して結婚」に続く、中編です。

東京暮らしがスタート。起業のための足掛かりにと、選んだ勤務先は保育園

画像はイメージです
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 4月。東京に移り、改めて保活を開始。認可、認可外にはそれほどこだわっていませんでしたが、認可外でも何十人と待機児童がいる状況でした。復職先は決まっておらず、保活・就活の3~4カ月の遅れを取り戻すつもりでいたので、保育園が決まらない中、一時保育を利用しながら就職活動をするという状況で、落ち着かず、常に焦りがありました。

 そのうち、「こんなに利用したい人が多くいるのに、受け皿がいつまでも足りないのはなぜなのか?」という怒りにも似た問題意識が強くなっていきました。需要と供給という市場のメカニズムが働かないシステム自体に、そもそも問題があるのではないか? ならば、「自分のこれまでの経験を生かして、何か役に立てることがあるのではないか?」と考えるようになりました。

 思い立ったらすぐ行動! 保育士資格取得や子育てに関する知識を身に付けると同時に、保育所の経営、現場のオペレーション、職員がどのような気持ちで働いているかなどを知る必要があると考え、保育業界の仕事に就いてみようと考えました。

 そんなとき、大手保育事業者の役員面接で、驚くような言葉を投げかけられたのです。

 「ところで、お子さんの保育園はいつ決まりますか?」

 そんなこと、こっちが聞きたい。

 「事業所内保育所など、社員向けの保育所の枠などはないのでしょうか?」と戸惑いながらも聞いてみると、「ありませんよ。皆さん、自分で決めてきていますよ」と取り付く島もありませんでした。東京の保育園事情を熟知しているはずで、多くの女性社員を抱える会社の経営層が、このレベルの認識しかないのかと。であれば、一般の企業に勤めながら子育てをしている女性は、想像を絶するほどの大変な思いをしているのではないか、と思いました。

 その役員からは「そんなに保育事業を手掛けたいなら自分でおやりになれば」とも言われ、それしか方法はないのか……と。こうして、起業して保育所事業を立ち上げよう、という目標が前倒しされることになりました。