親から嫌われることは子どものトラウマになるか

 行動をするだけでいいのか、もしかしたら、「きょうだいの一方を、よりかわいいと思ってしまう」自分の気持ちが子どもに伝わるのでは、という心配もあるでしょう。

 もちろん子どもは敏感ですから、あなたの気持ちはそのまま伝わっていると考えたほうがいいでしょう。

 お母さんから、あまり好かれていないと感じることは、子どもにとってはショックな出来事のはずです。もしも、きょうだいの一方だけがとても心地よい環境が与えられ、もう一方には一切与えられていない、というふうな状況であればなおさら。そのような事態があるとしたら、すぐに修正しなくてはいけません。

 しかし、ちょっとした「好き嫌い」は、この先成長する中で、当たり前に遭遇する試練です。恋愛だって、自分が好きになる人が必ず自分を好きになってくれるとは限りません。就職活動だって、「あなたは必要ない」と断られ続けることも多々ある。そういった試練を1つ経験することによって、その子どもは人生のままならなさを受け入れていくという考え方もできます。

 第一子のときは元気だったけれど、第二子を産んだ後にうつっぽくなり、その子が0歳から5歳ぐらいの間、ずっとつらかった。そんなお母さんに育てられた子どもは、「お母さんはつらそうだった」という記憶を将来まで引きずる可能性もあります。しかし、大人になってから、お母さんの置かれていた状況を理解して、乗り越えられる人もたくさんいます。小学校低学年ぐらいまでは親は「教える側」ですが、もう少し大きくなったら、ある程度社会に預けて社会に育ててもらう部分もあるのです。

 子どもの人生を全部丸ごと抱え込まなくてもいい。そう思うことで、あなた自身の弱さも、不器用さも、ちょっと許せるようになれるものです。

(取材・構成・イラスト/柳本 操 イメージ写真/坂齊清)