親の役割を「行動」で示す

 子どもに対して「好きになれない」と思ってもいい。ただ、親という役割はしっかりと果たさなければいけません。そこはあなた自身が子どもを持った一人の大人として、クールに割り切りたい部分です。

 親としての役割を果たすとは、どういうことか。例えば、「親としての仕事には手を抜かない」と決めるのはどうでしょう。

 お稽古事はきょうだいで同じようにやらせる。サポートする
 同じようにあいさつする
 同じように手をつなぐ
 同じようにごはんやおやつを与える

 これらはすべて、「気持ち」ではなく、「行動」によってできること。親としての行動に、淡々と集中するのです。

 多くの人が「子どもを好きにならなくちゃ」と、まず「気持ち」を変えようとします。しかし、必ずといっていいほど、失敗します。

例えば、「虫が嫌い」だとして「虫のことを好きにならなくちゃ」と思っても、つらいだけですね、しかし、図鑑を買ってスケッチをしてみたり、エサを与えてみたりする、といった「行動」から始めてみると、だんだん「意外と葉っぱをモグモグ食べる口がかわいいなぁ」なんて、思えてきたりするものです。

 これは、最初は「嫌い」という思いでいっぱいだった脳が、あなたの「行動」という情報を受け取ることによって少しずつ柔軟性を取り戻し、新しい考えを受け入れる余地ができた、ということを示します。一方、嫌い、嫌いと思い続けて一切行動をしないと、その思いは固定されて、どんどん「嫌い」が膨らんでしまいます。

 毎日、あいさつをして、接しているうちに、いつしか「この子、こんな優しさも持っているんだ」「笑顔がかわいいな」と思えるようになる瞬間もある。「好きにならなくちゃ」と必死で、頑なに思っているだけでは、このような関係の変化は起こりにくいものです。

 ただ、「こうやって公平に行動しているから、相手も素直になるはず」とは期待しないようにしましょう。前回もお話ししたように、日本は世界と比較しても「子どもは親の言うなりになるもの」と捉える価値観が強いので、「私がこうしているのだから、相手も変わるはず」と期待を大きくしてしまいがちですが、ここでは相手がどういう反応をしようと「自分が行動する」という点にだけ、集中してほしいと思います。

 ついつい「理想の母」を目指してしまう人は、下の図のような「7:3バランス」を意識するだけでも、心が落ち着くかもしれません。

 これは私がカウンセリングの場で提案しているワークで、理想の自分、本音の自分、その中間にある「7:3バランス」の考えを書くことによって今の自分を認められるようになる、という方法です。自分は今、悩んでいるけれど、その悩みに対処ができている、という事実によって自信を強めることができ、「理想を求め過ぎて自分を責める」という悪循環からも抜け出すことができやすいのです。