子育てから仕事から夫婦関係から社会問題まで、働く母とはなんと多くの顔を持って生きていることだろう。最愛の息子を育てながら小説家として活躍する川上未映子さんが、素敵も嘆きもぜんぶ詰め込んだ日々を全16回にわたりDUAL読者にお届けします。第9回のテーマは、「小学校受験」についての前編です。

 ついこのあいだまで赤ん坊だと思っていたら、横顔はもう少年のよう……時間の経つの、こんなに早くていいんだろうかと今日もフレシネを飲んで考えた。

 息子はこの春に4歳になる。いちおう幼稚園へ通い出す年齢なのだけれど、うちは共働きなので、お世話になっている保育園にそのまま通いつづけることにした。幼稚園も魅力的な要素はたくさんあるけれど、しかし午後1時台に帰ってこられては──いくら延長保育があるとはいえ、そんなの生活がたちゆかない。保育園、心の底からありがたい。

 まわりでは幼稚園受験した家庭も多かった。けれどこの数年、よく見聞きするのは小学校受験について。ママ友や、いわゆる著名人ママたちに会うと「どこか受けるの?」と質問されることが本当に多い。

私立派ママの説得力がすごくて

 小学校受験なんてまったく──まったく頭になかった。だって受験のために塾に1年~2年通うなんて、そんなのすごすぎないだろうか……全然現実的じゃない気がする。しかし、受験をして私立に通わせているママたちの滑らかかつ説得力のある話を聞けば聞くほど、「ど、どうしよう、受験させない理由、ないんじゃないか……」と思えてくるからおそろしいものだ。私立と公立。受験っていったいなんなのか。