―― ビースタイルさんのような会社と、「誰一人、産育休を取らせたくない」という会社では、住んでいる世界が違うように感じます。先ほど言及した外資系大手派遣会社の社長は、「非正規になる人は、もともと産育休を望んでいないだろう」とまで言っていました。そして「正社員が休んだときの代替要員が派遣社員だから、その派遣社員に産育休を取らせたら、現場はどうやって回していけるんだ」と。

 派遣先と派遣元の雇用期間を同じにし、派遣先からその派遣社員が切られたら自分のところとも契約を切って捨ててしまう。こういった経営者の意識の問題が、マタハラの根本につながっています。そういったこともあり、御社の「女性の活躍推進」と「企業としての成長・進化」を両立する会社を選んだ「ホワイトアロー企業100選」は非常に意義深いと思います。これをやろうと思ったきっかけを教えてください。

女性は20代後半は、100人中100人がモヤモヤする

三原 ビースタイルとしては、以前から、これまで手掛けていなかった「正社員女性の転職支援サービス」事業を始めようと企画を練っていました。年代別の調査を行った結果、女性は20代後半になると、仕事や人生のことで悩み、大変“モヤモヤする”時期があることが分かりました。どうやら100人中100人がモヤモヤするらしい、と。

 それなのに、転職となるととても近視眼的になってしまうケースが多い。女性にとってのベストな転職を考えた際、「自分の10年後を見据え、キャリアを継続させて発展させることができる、女性のための人材紹介サービスをつくろう」と思うに至り、「これからの転職。」というサービスを開始しました。主婦に限らず、すべての女性にとっての幸せな転職の在り方、働き方を社会に広める会社をつくろうと思ったのです。

 「これからの転職。」で提唱している「ホワイトアロー」という名称の「ホワイト」は「ホワイト企業」から取り、働き手の幸せも考える会社という意味を込めました。「アロー」は成長を意味しています。成長している企業でないと雇用は増えませんから。大企業でも、ここ10~20年間、採用人数の合計数が変わらない、もしくは、減少しているケースが多いのです。

 若くて成長率が高く、それでいて“ホワイトなスタンス”を持ち合わせている……。そういう会社を集めてインタビューしました。

仕事が好きな人から「働く場所」を取り上げてはいけない

―― 最後に、登録者や主婦の方へのメッセージをお聞かせください。

三原 仕事を通じて自己表現することが好きな人、または、得意な人っていらっしゃいますよね。つまり、会社で評価されて、とにかく仕事が好きな人。そういう方が「働く場所」を取り上げられてしまう、という状況を私は無くしたいのです。逆に、「仕事ではなく、家庭や子育てを通した自己表現を重視したい」という方もいらっしゃいます。そういう方はやっぱり家にいたほうがいいでしょう。「社会の全員が全員働いているのが幸せ」というわけではないのです。

 しかし、「仕事を通じて評価されたい」「職場というコミュニティーに所属したい」「収入を増やして、生活を充実させたい」と思っている方が、結婚や出産によってキャリアを継続できなくなってしまったり、出世の道から外されたりしてしまうという事態は是正していくべきだと思います。

―― 確かに、仕事は自己表現の場でもありますね。非正規雇用化という流れが強まっている今、「幸せな女性の生き方」に注目してサポートされている御社の試みは、斬新で、心強く感じます。

今回お話を伺ったのは……
三原邦彦(みはら・くにひこ)
ビースタイル代表取締役

芝浦工業大学卒業後、株式会社インテリジェンス、同社子会社ECサーブテクノロジー代表取締社長などを経て、2002年主婦の就職支援事業を行う人材派遣会社「株式会社ビースタイル」を設立。現在は若者の就職支援までに拡大し、活躍の機会を得られずに埋もれていた優秀な人材に働く機会を提供している。
ホームページ:http://www.bstylegroup.co.jp/、フェイスブック:https://www.facebook.com/bstylegroup/

小酒部さやかの「取材後記」

 取材時期は昨年のクリスマス。扉を開けると、デコレーションされた受付には、三原代表直筆で「We Wish You a Merry Christmas!!」と書かれたアクリルボードが置かれ、自由で楽しいエネルギーがワッと伝わってきました。

 「女性活躍」という発想がまだないころに、このテーマを掲げて人材派遣会社を始めることは、“常識との闘い”だったはずです。ビースタイルさんが経営者の意識を変え、女性活躍を浸透させることができた理由を知りたい。革命児のエネルギーの源は何だろう。そう思って訪ねました。

 女性活躍を裏付けるデータの数々にも驚きましたが、何よりも「仕事が自己表現となっている人の場所を奪うのはよくない」と断言する、三原代表の力強く温かいまなざしに勇気づけられるインタビューでした。三原代表の「カッコよさ」が少しでもお伝えできたらと思います。

●「マタハラNet」とは?

NPO法人マタニティハラスメント対策ネットワーク(通称:マタハラNet)。2014年7月に設立したマタハラ被害者支援団体。少子高齢化が進み労働人口が減っていくこれからの日本で、育児や介護、病気やけがなど様々な状況の人達が働き続けられる社会の実現のため活動している。http://www.mataharanet.org/

(ライター/水野宏信、撮影/村上 岳)