マタハラNet代表・小酒部さやかさんの新連載・第2回。今回、小酒部さんがお話を伺ったのは、女性向け人材サービスの『しゅふJOB』や『時短エグゼ』を展開するビースタイル(東京都新宿区)の代表取締役社長CDO(事業創造担当)を務める三原邦彦さんです。

女性が結婚・出産後に働き続けられない状況を、「俺が変えなくて誰が変える」

ビースタイル代表取締役社長CDOの三原邦彦さん
ビースタイル代表取締役社長CDOの三原邦彦さん

小酒部 主婦を中心とした派遣会社の起業は、業界の常識とは大きく異なる挑戦だったと思います。起業時のお気持ちをお聞かせください。

三原さん(以下、敬称略) 起業する前まで、私はすごく幸せなサラリーマン生活を送り、多くのチャンスをいただき、大きなポストにも就くこともできました。自分にはそれほど学があるとは思っていませんので、「これは出来過ぎだ」という気持ちになったほどです。

 起業を考えたとき、「サラリーマン時代の経験は、日本の女性の就労問題を解決するためにあったのではないか」と思いました。

 サラリーマンとしてさらなる成果を求めるというより、「これまでに培ってきた人材業界での経験を、社会課題の解決に還元したい」という思いに至ったのです。女性が結婚・出産後に働き続けることができなくなるという現実を目の当たりにして、最終的には「俺がやらなければ誰がやる」という気持ちになりました。

 現在、ビースタイルは様々な目的を掲げています。利益を追求するだけではない、ある意味“面倒臭い会社”だといえます。売り上げだけを追求していたら、売り上げは現在の3倍くらいの規模になっている気がします。しかし、社会が求めることを大事にしながら生きるという道を私は選びました。

―― 2015年6月の決算では、約50億円の売り上げを挙げていらっしゃいます。手応えを感じたのはいつごろからでしょう?

三原 2002年の設立当初、こんな仮説を立てました。少子化が進むにつれて、日本は女性労働力を活用しなければならなくなる。近未来を予測する場合、「人口」は最も予測が可能なデータの一つでしょう。つまり、企業によるパートタイムやワークシェアリングの導入が進むだろうと想定したのですが、仮説は仮説にしかすぎず、なかなか導入が進まなかったというのが実態でした。

 女性活用を進めることができたのは、経済的なメリットを示したことが大きかったと思います。以前、ある派遣会社さんが女性活躍推進を企業に働きかけたことがあったようですが、ただ単純に「女性活用を進めましょう」と促すレベルにとどまっていました。また、NPO団体などが主婦の雇用をつくろうとしたこともありましたが、大きな動きには結び付かなかったようです。我々は「ホワイトカラーの生産性を~%上げるため」「投資対効果を~%改善するため」という目的をきちんと経営者の言葉に変換して提案できたからこそ、道が開けたのだと思います。