山口照美さんが民間人校長を務める大阪市の敷津小学校では6年生のキャリア教育に力を入れています(過去記事「夢を見る才能を子どもたちに伝えたい」参照)。様々な職業に就く人たちを招いて子どもたちに話を聞かせる理由は、「時代の変化に合わせて仕事を作れる人になってほしい」という願いからだと山口さんは言います。

起業経験のある校長だから言えること

「優秀な人材なら企業が手放すわけはない。公募で集まる校長なんかロクな人材じゃないに決まっている」

 何度か見かけた批判で、確かにそう受け取られても仕方ない面はある。不祥事も早々のリタイヤも、実際にあったのだから。ただ、企業の早期退職制度を利用して思い切って飛び込んできた人、たまたま人生の転機だった人もいる。私は、最初の会社に5年勤めて退社した後は、起業して自分の会社を11年運営していた。会社と言っても、私と夫だけの小さな会社だ。大きなサイト制作などの案件は、その都度、信頼できるフリーランスのプロや会社とプロジェクトチームを立ち上げて請け負っていた。

 私は広報代行サービスやコンサルティングの傍ら、年80回ほど、セミナー講師を務めていた。そのため、いつも半年先までの出張予定が詰まっている。しかし、公募のあった時期は、産後4カ月。セミナー依頼をギリギリまで減らしていた時期だった。もし、公募のタイミングが産後に当たっていなければ、私は応募していない。請けた仕事の予定を見て、諦めていただろう。自営業でたまたま産後だったから、チャレンジできた。

 1月26日現在、任期延長の面接は受けたが結果は未だ来ない。4月から無職になるかどうかの瀬戸際だ。でも、案外のんきに構えている。学校現場に来て知った課題を、中から変えることもできれば、外から助けることもできる。どちらにも対応できてこそ、民間から現場に来た意味がある。