海の生き物に迫った『オーシャンズ』や、鳥と並走する映像で驚かせた『WATARIDORI』など、ネイチャードキュメンタリーのヒット作を連発しているフランス人監督が新たに注目したのは、地上の生物たち。『シーズンズ 2万年の地球紀行』の日本語版監修を手がけられた新宅広二さんに、この作品の見どころや、親子での楽しみ方などをお聞きしました。

新宅広二(しんたく・こうじ) 生態科学研究機構 理事長。1968年生まれ。専門は動物行動学と教育工学で、大学院修了後、上野動物園勤務。その後、国内外のフィールドワークを含め400種類以上の野生動物の生態や飼育方法を修得。大学で20年以上教鞭をとる。WOWOWの『BBC EARTHシリーズ』をはじめ、教育工学を活かした監修業では国内外の映画や科学番組など300作品以上をてがけるほか、動物園・水族館・博物館のプロデュースも多数実績がある。著書は動物図鑑の執筆・監修のほか、近刊『すごい動物学』(永岡書店)などがある。

日本人が見やすいドキュメンタリーに

――『シーズンズ』、小学5年生の子どもと一緒に鑑賞しました。オオカミ、シカ、馬、バイソンなど、登場する動物たちに興味津々で、最後まで食い入るように見てました。大人も、映像とナレーションから地球と動物についてさまざまな知識を得られる、とても興味深い作品でした。

 ありがとうございます。実は、それには理由がありまして…。これはフランスの作品なんですけど、本国版には、ナレーションが付いてないんですよ。

――そうなんですか?

 ええ。これはフランスのネイチャードキュメンタリーのトレンドでもあるんですが、「知識はいいから、とにかく感じてくれ」という姿勢で作られているんです。ただ、どこの国でもそういうやり方が通用するわけじゃない。日本でもふつう、「この動物の名前は○○」とか「今、○○をしているところです」といった説明をナレーションで入れますよね?

――そうですね。

 配給のギャガさんとしては、そんな日本の風土にあったものにしたい、と。「このシーンのどこを見たらいいのか?」と考えながら見るとなかなか映像に集中できないので、ガイドするようなナレーションを付けてほしい、ということでした。