「監修業」を職業として確立したい
――今回はゼロからナレーションを考えていく作業。ふだんの監修のお仕事とはずいぶん勝手が違ったんじゃないですか?
そうですね。ふつうは外国語のナレーションを訳せばほぼ済んだりするんですが、今回はそもそもナレーションがない(笑)。監修としては一番の上級レベルで、責任も重大でした。
――新宅さんは映画や科学番組、博物館の監修を多く手がけられていますが、なぜですか? 動物のことをもっと知ってほしい、教えたいというような思いがあったりするのでしょうか?
そうですね。私は自分の肩書きを「監修業」と名乗っているんです。実際、そんな業種はないんですけど。
――初めて聞きました(笑)。
日本では、専門家は、大学の研究者にならなきゃいけないと思われています。でも海外には、研究のバックグラウンドがありながらも、もうちょっと教育寄りの仕事をしている人たちがたくさんいるんですね。博物館で働くとか、映画の監修とか。そういう、専門知識を還元できるような場がこれまでなさすぎたから、日本は先進国で最も理科離れが進んだんだと思うんです。
――将来、新宅さんの活躍を見て、監修業に憧れる子どもが出てきたりするといいですね。
監修業が一般化して、それで食べていける人たちが育つといいなと思っています。僕は動物行動学が専門ですが、工学、化学、宇宙工学…監修業で才能が開花する人は、世の中にたくさんいると思いますよ。
(文/泊貴洋・写真/菊池くらげ)