専門家も発見が多い、画期的な映像

――メッセージがおしつけがましくなく伝えられているのも、この作品の良いところだと思います。ナレーションの笑福亭鶴瓶の力も大きそうですよね?

 鶴瓶さんは、本当にお上手でしたね。

――「怪盗グルー」の声も担当されているので、子どもは、より親しみを持って見られたみたいです。

 鶴瓶さんのナレーションは実感がこもっているので、共感しやすい。一方の木村文乃さんも、声優さんかというぐらいお上手で、透明感がある。お2人のバランスが良かったですよね。

――アクション映画のように興奮して見られるシーンもたくさんありました。たとえば馬とオオカミのチェイスシーン。群れのすぐ横をカメラが並走していて、すごい迫力でした。

 この映画は、最新のハイテク機材を駆使して撮影されているんです。あのシーンは、野生動物の自然な表情や行動を撮影するため、無音バギーを使って撮られたもの。音や排気ガスが出ないよう、この作品のために開発されたバギーなんです。画期的な映像で、見ていて、私もたくさんの発見がありました。

――たとえば?

 オオカミたちがどういうフォーメーションで狩りをしているのか、あの映像から克明にわかるんです。逃げる馬たちは、群れから離れると狙われるので、追っ手を攪乱しながら走る。でも、どうやって攪乱するかは、長らくわかっていなかった。だけどあの映像をよく見ると、時々、センターを入れ替えながら走ったりしているんです。

――専門家でも、発見がある映画なんですね。

 そうなんですよ。「教科書で習ったことは本当だったんだ!」とわかるシーンもあったりして、感動する場面がいくつもありました。

――オオカミが人間に飼い慣らされて犬になった、イノシシがブタになっていった、など、身近な動物たちのルーツを知れたのも、大きなポイントでした。

 実はそこが画期的で、これまで、ペットや家畜の歴史を扱ったネイチャードキュメンタリーはなかったんです。しかも、それを漠然とではなく、人と動物がパートナーになる瞬間から描いている。私としては、そんな人間と動物の関係の歴史も、子どもたちに学んでほしいところでした。なぜなら我々は、動物の一部を食料としていただいて生きているわけですから。