『シーズンズ』の意味と込められたメッセージ

――ナレーションを付ける作業は、どのように?

 私が原案を考え、脚本・演出の三井瑠美さんに台本にしていただく。それをフランスの監督に確認する、という流れでした。監督から「このシーンは、もっとこういうことが言いたかったんだ」という声があれば、反映して直していきました。

――今回の監修作業で、特に意識したのは?

 まずは、専門用語を使わないこと。学術的に貴重なシーンも、子どもに分かるような言葉で伝えられたらと思いました。

 それから意識したのは、日本の動物と結びつきやすい名前にすることです。この映画は主にヨーロッパで撮影されているので、正式名称に「ヨーロッパ」と付いた生き物がたくさん出てくるんです。ヨーロッパバイソンとか、ヨーロッパヤマネとか。でも、あんまり「ヨーロッパ」が続くと、観客は、よその国の話だと思ってしまう。だから「ヤマネ」と短く表現したりして、日本人が見ても実感が湧くよう心がけました。あと、このタイトルの意味って、お気づきになりました?

――「四季」ですか?

 はい。このタイトルから「春夏秋冬の動物の1年の生態を撮った映画』と誤解されがちなんですけど、実はそこがテーマではなくて。監督は、2万年前の氷河期のピークから温暖化した現代に至るまでの、“人と動物の関係”を四季にたとえているんです。たとえば、動物と森の中でうまく共存していた平和な時代を春にたとえ、生物を乱獲し、環境破壊をしてしまった時期を冬にたとえている。

 この作品の素敵なところは、冬で終わっていないところなんです。確かに森は少なくなり、人間は生き物をたくさん殺してしまったけれども、よく見ると、人間が作った畑に野生動物がやってきて、ともに暮らしたりしている。「そこを見落としてないかい?まだまだ野生動物と共存できる道があるかもしれないよ」という、すごく素敵なメッセージが込められています。

――今の子どもは、小さいころから環境問題について教育を受けています。うちの子は、学校で習った森林伐採などの問題がとてもリアルに感じられたようでした。

 これまでの環境教育は、人間がやってきた悪行を強調して伝えすぎているところがあるんです。「人間が森を壊し、動物を殺してきた」という説明ばかり聞いていると、子どもたちが人間嫌いになったり、将来や地球に夢を持てなくなってしまうという問題点がありました。そのため、最新の環境教育では、子どもに対して、もうちょっと丁寧に説明していこう、という流れになりつつあります。

――丁寧というのは、良い面も、悪い面も?

 そうですね。そして最後に、生き物と共存できる方向性を示してあげるようにする。

――この作品がまさにそうなんですね。日本版監修者として、そんなメッセージを子どもたちに届けたいという思いもありましたか?

 ありましたね。人間が文明化して以降、生活圏の動物を排除し、人間だけで生きるようになりました。でも、「畑の果実をちょっとくらいあげてもいい」というように、少しだけ妥協することで、野生動物との緩衝地帯みたいなものを作れるんじゃないか。それを次世代の子どもたちが作ってくれるのではないか、という予感が私にはあるんです。だからこの作品のメッセージにはとても共感しましたね。