世界に日本人の心を広めた『武士道』の著者である新渡戸稲造博士の精神を引き継ぐ新渡戸文化学園。東京・中野区にあり、子ども園から短大までをもつ一貫校だ。中でもいま注目を浴びているのが、小学校。働く母の支援を前面に出し、敷地内に独自のアフタースクールをいち早く設置。アフタースクール専用の校舎に加え、「本物に触れる」多様なプログラムを展開している。また栄養バランスの良い給食やおやつでも定評がある。

 私立の小学校に通わせるとなると、送迎やお弁当、係や手伝いなど学校への関わりなどの負担が大きい。共働き家庭には、受験を躊躇する原因の一つだろう。

 学校の方針に納得して受験・入学をする以上、家庭側が合わせるのが当たり前と考える私立も多い。新渡戸文化学園は共働き家庭のニーズに徹底的に答えようとサービスや制度を新たに作ったことで、入学希望者は右肩上がりに伸びた。「ここでもいいか」ではなく、「この学校にこそ入れたい」という親が増えたことで、学校への協力も積極的な親が増え、学校にとっても子どもにとっても良い環境ができつつあるという豊川圭一理事長に話を聞いた。

女性の自立支援が、学校を元気にする

日経DUAL編集部 働くお母さんの支援を掲げて注目を浴びていますが、乗り出そうと思ったきっかけを教えてください。

豊川圭一理事長(以下、敬称略) 実は、女性の自立支援をするというのは、突然できたものではなく以前からこの学校に根付いていた理念なのです。1927年にこの学校の前身が設立された時は、女子経済専門学校として、昭和が始まったばかりの時代に女性の自立を促す先進的な学校として始まったのです。それ以来、ずっと女性教育やキャリア教育に力を入れてきた学校ですので、働くお母さんたちを支援したいというのは、自然な流れでもありました。

 特に今は、少子化が問題となると同時に、女性の活躍を社会的にも支援しようとする時代です。「私学らしい少子化対策」をしたいと思い、アフタースクールの整備なども始めました。そういった共働き支援は、他の私学もぜひ真似して欲しいと思っています。

―― 働く親の支援とは具体的にどんなことをしているのでしょうか?

豊川 学校独自の放課後の教育活動として、アフタースクールを作りました。学童を作るとき国の補助金をいただくには規定を満たさないといけないのですが、様々な家庭のニーズに応えるために補助金は考えず独自で作ったんです。学校のすぐ横の敷地内にアフタースクール専用の施設も作りました。

 アフタースクールには、週1日来る子もいれば、週5日通う子もいます。それを分け隔てなく受け入れます。就業証明もいりません。お母さんが買い物や休息が必要なら、それで預けて構わないのです。

 例えば、台風が来ると学校は休校になりますよね。でも、朝言われてもいきなり会社を休める人なんてそういません。ですから、私たちは台風で通学の安全上、学校を休みにしても、アフタースクールを朝から開けて子ども達を受け入れました。「保護者が困っているときにダメと言わないでくれ」と運営スタッフにはいつもお願いしています。義務というよりサービスだと思っています。預かっている間には多様なプログラムもできるようになっています。費用はかかる代わりに、必要とされるものを提供していきます。

 ほかにも附属の幼稚園を子ども園にし、19時まで預けられるようにしたと同時に、健康的で美味しい給食を提供しています。お弁当を作る手間はいらないのです。

子どもたちは学校が終わった後、敷地内のアフタースクールに集合。宿題をしたり、プログラムに参加したりする
子どもたちは学校が終わった後、敷地内のアフタースクールに集合。宿題をしたり、プログラムに参加したりする