マタハラNet(マタニティハラスメント対策ネットワーク)代表・小酒部さやかさんによる新連載「小酒部さやか・突撃インタビュー “マタハラはなくて当たり前”の企業はココが違う!」がスタートしました。

小酒部さんは言います。「マタハラは女性の人権問題であるだけでなく、日本の“経済問題”であり、企業の“経営問題”です。これからは上司や男性達でも介護休暇を取る時代になっていきます。マタハラなどでつまずいている場合ではありません。従業員が長期休暇を取得する、残業ができないとなったときの解決策を企業が見いださない限り、この問題はなくなりません。解決策を見いだしている企業の例をヒントに、一人ひとりが当事者意識を持ってこの問題に向き合ってもらえたらと思います」。

今回、小酒部さんが渋谷にあるカフェでお話を伺ったのは、旅館コンサルティング業を営む旅館総合研究所(東京都渋谷区)所長の重松正弥さんと、取締役の岩澤優花さんです。

子どもを持つ主婦が仕事ができる理由

マタハラNet代表・小酒部さやかさん
マタハラNet代表・小酒部さやかさん

小酒部 旅館総合研究所さんのホームページには、「主婦の方大歓迎!」と謳われ、求人も出されています。今回のインタビューでは、「主婦の方を活かす」という方針の理由と、主婦の方に活躍してもらうための秘訣をお伺いしたいと思います。その前にまずは、どんな仕事をされている会社さんなのか、教えていただけますか?

重松さん(以下、敬称略) 私達はクライアントである旅館やホテルに代わってインターネットで宿泊プランなどの商品を提示する仕事です。旅館の経営者は高齢の方が多いので、インターネットを使ったPRなどはあまり得意ではなく、そこをお手伝いしています。

―― 社員にはどのようなスキルが求められますか? また、どのような人が向いていると言えますか?

重松 旅館やホテルのパソコン作業も代行するので、コツコツ正確に仕事をする能力が必要です。実際に採用したスタッフの傾向を見ると、女性のほうが向いている面があると思います。もちろん力を発揮してくれる男性もいますが、色々採用しながら考えていたところ、バツグンに仕事ができるのは子どもを持つ主婦であることに気づきました。

 子どもがいると、時間に限りがあって、遅くなる前に何が何でも帰らなくてはならない。そうすると、時間にシビアになって、仕事が効率化できる。仕事の期限を明確に意識し、「絶対に終わらせる」という意識が非常に高い。そうした傾向があると思います。

―― 主婦の方々を採用することで、会社全体の仕事ぶりはどう変わりましたか?

旅館総合研究所・所長の重松正弥さん
旅館総合研究所・所長の重松正弥さん

重松 効率のよい彼女達の仕事ぶりを見ているうちに、残業をしようがしまいが、あまり業務の質に変化はないと気づきました。100点の資料でも80点の資料でも、その資料が生み出す成果が同じであれば、80点の資料で行ったほうが作業量は少なくて済みます。「夕方5~6時までに終えられる仕事を、残業してずるずる引き延ばしているだけなのではないか」という感覚が、私の中で芽生えてきたのです。

 また、当初は、基本給に残業代を含む給与体系を採用していたのですが、その結果、速く仕事しても遅く仕事しても給与が変わらないことも影響してか、慢性的に残業が続くようになってしまいました。それが2008年の創業から3~4年目まで続き、「健全ではない」と感じていました。

―― そして、その後、会社のあり方が少しずつ変わっていったのですね。そこには何か決定的なきっかけがあったのでしょうか?