社内結婚した夫婦は、社内で「弱い立場」に立つ危険性がある
岩澤 社内結婚をすると、女性のほうが肩をたたかれるような古い体質の会社でした。私が辞めずにいたら、主人は多分どこかの現場に飛ばされていたのではないかと思います。暗黙の了解で私は辞めなくてはいけなくなったわけです。ただ、私が辞めた後に社内結婚をした同期の夫婦は、結婚しても夫婦で同じ会社の同じフロアで働いているそうですから、現在では社風も変わったようです。
―― マタハラもそうですが、職場でハラスメントされたとき、自分のパートナーが同じオフィスにいると声を挙げにくいものです。「止めてください」「改善してください」と声を挙げると、「そんなことを言ったら、旦那の出世に響くぞ」と半ば脅迫されたりするのです。社内結婚をされた方のつらいところですね。
重松 なぜそんなことをするのか私にはまったく共感できませんが、そういう社風の会社がまだあるのかもしれませんね。やはり、大きな会社は独自のルールがあり、規律上・道徳上よくないという枠にはめる傾向が強いのでしょうか。
―― 経営者によると思います。私達「マタハラNet」は、職場のダイバーシティーを進め、またハラスメントを解消することこそが、人材の雇用継続と活用につながり、経営戦略が生まれるという確信を持っています。この認識を広めたいと思っているのですが、経営者の間ではこういう考えが広まっていると感じますか?
重松 そもそも、そういった話は経営者の間ではなかなかしない、というのが実情です。まったく無いと言っていいくらいです。「採用が大変だ」という話はしても、自分にとって社員とはどのような存在なのか、自社の社員をどう捉えているのかか、といった話はしません。もちろん、マタハラといったことも。
私達の規模の会社の間で認識が広まるには時間がかかりそうですし、まずは、大企業から企業体質変えざるを得ない状況になるでしょう。状況を改善して、離職率も減り、会社の業績も増えたといったデータが出てくると違うと思いますが。
マタハラなんていう言葉は、そもそも社内に存在していない
―― 御社の場合はいかがですか?
重松 主婦の社員に活躍してもらっていますので、マタハラなんて言葉はそもそもありませんし、これからもないでしょう。でも、特別なことをしている意識はなく、当たり前のことを当たり前にしているだけです。
ただ、その結果、業績をどれだけ伸ばしていけるかどうかは、これからにかかっています。新規事業を進めようと思っているところですし、事業計画もありますので、この3年間はそれほど売り上げが増えてはおらず、準備期間だと捉えています。仕事を効率化することによって、これまでは私が担当していたような基本的な作業も、他の社員達に任せられるようになり、会社の将来を動かす仕事を、外に出て行うことができるようになってきましたし。経営状態はまだバラ色ではありませんが、会社としてはきちんとやっていると思います。
それに、人材の定着率が劇的に改善されました。残業があったころに比べても、全体の仕事の質がよくなっています。これも明らかな変化です。そして、私を含め、社員が生活もちゃんと楽しめている。私が先陣を切って「夕方6時には帰ろう」と言っていますので。本当に、皆が幸せになっているという実感があります。
―― それが何よりも重要です。そして、最高ですね!
(ライター/水野宏信、撮影/村上 岳)