2児の母である歌手のhitomiさんが、男女の社会的性差(ジェンダー)について、ジェンダー論の専門家、東京大学の瀬地山角教授にインタビュー。前回の記事に続いて、「夫婦の働き方や家事・育児の分担」「男の子・女の子の育て方」など家庭生活での身近な事例を挙げながら、じっくりとお話を伺います。

出産後フルタイムの仕事をやめたら、宝くじ級の損失!?

hitomiさん(以下、敬称略) 先生がおっしゃるには、働く女性で結婚退職する人は減ってきているものの、第一子の出産後に退職してしまう人はいまだに多いということですよね。途中で仕事をやめてしまうと、大きな損失があるとのことですが、それは一体どんなものでしょうか?

瀬地山先生(以下、敬称略) もし出産後にフルタイムで働いていた会社をやめた場合、同じような条件の職場や職種に就けるかというと、今の社会では厳しいものがあります。出産後に仕事をやめると、その後得られる生涯年収のロスは莫大なものになります。

hitomi どのぐらいの損失があるんですか?

瀬地山 現在、正社員の女性の平均年収が350万円ですから、例えばその後の勤務期間が30年として計算すると、ざっと1億円の損失になります。もし、大卒で大都市部の条件の良い会社に勤めているなら、退職金やその後の年金も含めると2億~3億円の損失になることもあり得ます。

hitomi 1億~3億?? 宝くじみたいな金額ですね。

瀬地山 そう! 年末ジャンボを買ってる場合ちゃうんですよ。地道にコツコツ30年働けば、確実に1億~3億が手に入るんです。東大の女子学生でも「将来、専業主婦になりたいんです」という人がいるんですけど、いつも決まってこうアドバイスするんです。

 「人生、仕事だけじゃないからかまへんけど、子ども産んで仕事やめたら、残りの生涯で3億稼げるチャンスを捨てるんやで! それを知った上で判断せぇな」と。実際の数字を聞くと、ほとんどの女子学生が目の色を変えるんですけどね。

hitomi 確かにそう言われたら、考えを変えたくなりますね(笑)。でも、出産後フルタイムで働き続けるのが大変だからこそ、やめてしまう人が多いわけで、やめずに働き続けるのは、なかなか自分一人の力では難しいですよね。

瀬地山 そこで必要不可欠なのが夫の家事・育児への参加なんです。「お手伝い」というレベルではなく、「分担する」「シェアする」レベルで必要です。

 では、どの程度、夫が家事・育児に参加したら、妻のフルタイムの就業が可能になるかと言いますと……。

「昨年はお仕事でバタバタしていて、娘の七五三ができず…年始にお祝いをしました。娘が着物を着てルンルンしている姿に、嬉しくなりました。2人で一緒に着物を着たかったので、時期はズレてしまったけど、良かったな~と思いました。 by hitomi」