妻を出産退職に追いやる、夫の家事時間の少なさ

瀬地山 2人の子ども達が保育園に通っていたころは送り迎えはすべて担当していましたし、今でも毎日の夕食づくりは僕の担当です。hitomiさんのお宅ではどうされていますか?

hitomi わが家も夫が家のことを割とやってくれるタイプで、子育ての割合は半々ぐらい。家事は私のほうが彼よりちょっと割合が多い感じでしょうか。お部屋の掃除や食事づくりはお互いにできるほうが担当して、洗濯とトイレ掃除は私、お風呂掃除は夫、というように微妙に分担しています。

瀬地山 お子さんが大きくなれば、お子さんに家事を少しずつ任せてもいいかもしれませんね。小学生の息子はいつも風呂掃除やってくれます。皿洗いも、夕食のあとに「あとお願い」って言えば全部やります。

hitomi それは助かりますね! うちも上の子には少しずつお手伝いしてもらおうかな。

 一般のご家庭では、会社勤めのお父さんは早く帰りづらかったりして、家事や育児に時間を割くのが難しい部分もあるんでしょうね。

瀬地山 『社会生活基本調査(2011年)』によると、子どものいる共働き女性の一日の平均家事時間が4時間53分なのに対し、男性は一日39分です。そこには歴然とした差があります。共働きの女性はパートタイマーも含まれるので、家事時間が多くなっていますが、それにしても夫と妻ではかなりの時間の差があります。

hitomi ちょっとでも早く帰ってきて、子どもをお風呂に入れたり、寝かしつけてくれるだけで、だいぶ助かりますよね。

瀬地山 女性が働き続けるためには、男性の育児や家事への協力は必要不可欠です。実は女性が「結婚退職する」割合は減少しているのですが、第一子の出産後、働き続ける人は25%しかいません。「出産退職する」人はいまだに多いのです

hitomi それは何だかもったいない気がしますね。

瀬地山 フルタイムの仕事を途中でやめて、専業主婦になってしまうことで、一体どれだけ多くのものを失うか? その損失の大きさを示すデータと回避する方法については、次回の記事でお伝えします。

 ――次回の記事は明日、掲載します。ジェンダーの観点から「夫婦の働き方や家事・育児の分担」「男の子・女の子の育て方のヒント」について、hitomiさんがさらに突っ込んでインタビューしていきます。

瀬地山角
東京大学教授。1963年生まれ。奈良県出身。東京大学教養学部卒業後、同大学院博士課程修了。韓国ソウル大学留学、北海道大学文学部助手を経て、2008年より現職。専門は男女の社会的性差や差別を扱う「ジェンダー論」という分野で、研究と実践の両立を掲げている。「イクメン」という言葉がない時代から、職場の保育所に子ども2人を送り迎えし、夕食づくりも担当。生活に基づいた鋭い考察と笑いを交えた講義が人気。日本テレビ『世界一受けたい授業』に「男女の差別をなくすジェンダー論」をテーマに出演。著書に『東アジアの家父長制』、『お笑いジェンダー論』(いずれも勁草書房)などがある。

hitomi
1976年1月26日生まれ。1994年デビュー。歌手活動やタレント活動の他、アパレルや美容ケア商品のディレクションなども手がけている。今年、育児セラピストの資格を取得し、多方面で活躍の場を広げている。現在2児の母。詳しい情報はオフィシャルブログをチェック。

(文/伯耆原良子 撮影/有本真大)