家事・育児に積極的な夫と協力しながら、2児の子育てに奮闘中のhitomiさん。今回のテーマは、「男だから」「女だから」という性役割によって夫婦間の家事バランスが偏るなど、家庭でも身近な問題の「ジェンダー」です。ジェンダーについて詳しく話を聞くために、男女の社会的性差や差別を扱う「ジェンダー論」が専門の東京大学・瀬地山角教授に会いに行きました。

「男だから」「女だから」という性差から解き放つジェンダー

hitomiさん(以下、敬称略) 先生は「ジェンダー論」という分野をご専門にしていらっしゃいます。実は、「ジェンダー」という言葉が少々聞き慣れないといいますか…。「男女の役割の違いとか、性差別という意味なのかな?」などと分かっているようで分かっていない部分がたくさんありますので、ぜひ先生に「ジェンダーとは何か?」というところから、お話をお伺いできればと思います。

瀬地山先生(以下、敬称略) はい、分かりました。僕、標準語は関西弁やと思てる人間なんで、その点だけお許しくださいね(笑)。

 まず、「ジェンダー」という概念が日本に広がってきたのは1990年代なんですが、この言葉を日本語に訳すと「社会的性差」という意味になります。一方、その対になる概念が「生物学的性差」になり、英語では「セックス」という言葉で表現されます。

hitomi 生物学的性差というのは、いわゆる男女の身体的な違いみたいなものでしょうか?

瀬地山 そうですね。例えば、出産って女性にしかできないことですよね。こうした生物学的に決まっている違いは「生物学的性差」になるのですが、子育ては女性にしかできないことかというと、そうではありません。そこで「社会的性差」という概念が浮上してきます。

 子育ては女性にしかできない? いえ、男性ももちろん子育てをすることができますし、むしろできないことは何一つないといっていいでしょう。「母乳は与えられないのでは?」という人もいますが、母乳がなくても粉ミルクで育てることはできますからね。子どもを育てるのに母性が必須なわけではなく、大切なのは「親性」であって、父親でも母親でも愛する心があれば子どもはすくすくと育つのです。

hitomi 確かにそうですよね。ただ、実際のところは、子育ての大半は母親が担っている家庭が多いでしょうし、世の中的にも「子育ては母親がすべきもの」という考えはまだ残っていますよね。

瀬地山 そこなんです! 実は私達が「女やからこうせなあかん! 男やからこうせなあかん!」と言っている大半のことは、生物学的に決まっていることではなくて、社会的にこうあるべきだと、“人が考えていること”に過ぎないんですね。人が考えていることに過ぎないのであれば、人と人とが相談して変えていくことができる。ジェンダーという言葉はそんな破壊力を持ってるんです。

hitomi なるほど。そうすると、女性にしかできない出産は「生物学的性差」になるけれども、子育ては人が考えた「社会的性差」の問題であって、男性でも女性でも同じようにできますよってことなんですね! ジェンダーについてちょっと分かってきました。

 でも先生、そもそもなぜ「子育ては女性がすべきもの」という考え方が生まれてきたのでしょうか? ぜひその背景が知りたいです。

「最近1歳の息子と散歩していると、小川のせせらぎや、咲いてる花に癒されます。こうして生きてることが当たり前なようでいて、感謝すべきことだよな~って、ふと思います。2016年もみんなが健康でいられますように。。。 by hitomi」