ある平日の夜7時。3歳になったばかりの娘のお迎えを終えてようやく帰宅した会社員・マユミ。年明け早々、仕事は山積みで、まだ火曜日だというのにもうヘトヘト。夕ご飯を作る気力もなく、今日の夕食は惣菜弁当だ。「子どもたちにご飯を食べさせたら、1時間くらい遊ばせて、お風呂に入れて、歯磨き、寝かしつけ…」と段取りをシミュレーションしながら、玄関に入ってまず目についたのは小学2年の息子のランドセル。「自分の部屋に置きなさい」と100回は言ったというのに、いまだに守れない! 廊下の奥のリビングからは、呑気にテレビゲームに興じる息子の笑い声。廊下には上着が脱ぎ捨てられている。――イライラスイッチ点火。
「ただいまー。ねぇ、ランドセル、いつになったら……」
そう言いかけて入ったリビングのど真ん中には、昨日の夜に娘が遊んだお絵かき道具が散乱している。昨日は遅い時間になってしまったので片づけは省略して、お風呂に入れたのだった。「どうせまた出すから」とそのままにしてしまったけれど、やっぱり「散らかしっぱなし」は見る度に嫌な気持ちになる。――イライラ度、レベル「中」へ。
部屋の隅にはほこりをかぶったルンバ。半年前に満を持して導入したというのに「床の上のモノが片づかない」を理由に活躍頻度は低いことを自覚。自己嫌悪に陥る。――イライラ度、レベル「高」へ。
とりあえず落ち着こうとソファに座る。ん? お尻の下にクッションではない何かが積まれてある。……!! 夫のパジャマではないか。今日はマユミのほうが早く出勤だった。「朝、『会社に行く前に、リビングをきれいにしといてね』って夫に言ったはずなのに!!」。イライラ度、最上級へ……ドッカーン!!
もう、みんな、いい加減にして! 「片づけなさーーい!!」
「ママ、大きな声でこわーい」。娘がとうとう泣き出した……。
これは、ある共働き家族の日常を再現したショートストーリー。ひとつでも思い当たる節がある人は、“家族の片づけストレス”を抱えていると言えるだろう。
特に朝は早くから夫婦共に出勤し、夜は日が暮れてから帰宅という「共働きDUAL家庭」にとっては、家の中を毎日きれいに保つ「主婦・主夫」が不在のため、「家が片づかない!」という悩みは尽きません。「子どもに何度『片づけなさい』と言っても、家が片づきません」と途方に暮れている共働きママ&パパの声も聞こえてくる。
今年こそ、「片づけなさい!」と言わないで済む1年にしたい――。
そんな願いをかなえるためのTO DOを教えてもらおうと、子どもの発達、片づけノウハウ、住まいづくりの視点から各専門家にアドバイスを聞きに行った。
「小さな子どもに『片づけなさい』と言うのは、“無茶ぶり”です」
いきなり目からウロコの言葉を聞かせてくれたのは、実践女子大学生活科学部教授で保育学を専門とする松田純子さんだ。