妊娠が分かった後に考えるのが出産のための病院選び。希望する分娩のスタイルによって選ぶ病院は変わってきますが、最近では、自然分娩の他に、陣痛の痛みを麻酔で和らげる和痛分娩や痛みを取り除く無痛分娩がよく見られるようになってきました。これらの分娩は、自然分娩に比べると産後の回復が早く、体力を要する育児に備えたい高齢出産に向いているといわれています。その一方で、麻酔薬の赤ちゃんへの影響や、麻酔が効いていることでいきむタイミングがつかめないのでは? といった不安も感じる人も。下編では、無痛分娩専門クリニックの「東京マザーズクリニック」の林聡院長に、無痛分娩に対する不安、疑問について伺いました。

 無痛分娩は欧米ではごく一般的な出産方法です。経膣分娩をした女性の中で、フランスでは8割、アメリカでは6割が無痛分娩ですが、日本ではわずか4%程度と推測されます。そこには「おなかを痛めて産むからわが子を愛せる」といった、古い考えが立ちはだかります。

 無痛分娩を扱う病院は少しずつ増えてはいるものの、施行施設は全国で150足らずです(日本産科麻酔学会HPより)。興味はあっても、家から近い産院で実施されていなくて、断念するケースもあるようです。

 「出産時の痛みを和らげたい」というのは、すべての妊婦さんの共通の願いだと思います。ラマーズ法、ソフロロジー法といった呼吸法も、痛みを和らげるための手段の一つ。無痛分娩ではそれを麻酔で行います。

リラックスできるから分娩がスムースに進む

 無痛分娩のメリット、デメリットをそれぞれお話しします。

メリット

●痛みが軽減されて体力の消耗を抑えられる
 出産による母体の体力消耗が少なく、産後の回復が早いので、若いときほど体力がない高齢出産の人や産後すぐに職場復帰をしなくてはならない人、上の子のお世話をしなくてはならない人に向いた分娩方法といえます。

●痛みの不安感・恐怖感を和らげる
 痛みに弱い人や不安を感じやすい人、妊娠高血圧症候群で血圧の上昇が心配な方に向いています。第一子や第二子のときに経験した痛みを次は感じたくないという人が選ぶケースもあります。

●分娩第1期(陣痛開始から子宮口全開まで)の時間が短くなる
 筋肉の緊張がほぐれて子宮口が広がりやすくなるので、分娩第1期の所要時間が短くなります。逆に、分娩第2期(子宮口全開から分娩まで)は自然分娩に比べると多少、かかる時間が長くなる傾向があります。自然分娩では、激しい陣痛の痛みから、陣痛の波が来ているとき以外にもいきんでしまうため、お産が多少早く進むといわれていますが、無痛分娩では赤ちゃんが産道を降りてくるペースに任せて、最後の最後でいきむだけなので、多少時間がかかります。

●赤ちゃんに酸素がたっぷり届く
 陣痛の痛みで呼吸が浅くなったり、呼吸を止めたりしないので、お母さんの呼吸が安定して赤ちゃんへの酸素供給量が安定します。また、会陰回りの筋肉もリラックスして伸びやすいので、会陰切開率も下がります。

 では、デメリットは何でしょうか?