30代後半からの妊娠・出産を目指す人に役立つ情報をお届けするこの連載。今回は、妊娠期間中や分娩時に起こり得るリスクや対策、知っておきたい分娩の知識をテーマに、専門家に話を聞きました。まず上編では、全分娩に占める35歳以上の産婦の割合が45.9%(うち40歳以上は8.1%/平成26年度調べ)と、高齢妊娠の分娩を多く扱っている東京・育良クリニックの理事長、浦野晴美医師にお話を伺います。

最近の妊婦は特に子宮の収縮力が弱くなっている

日経DUAL編集部 30代後半からのいわゆる高齢妊娠において、起こり得る妊娠時や分娩時のリスクについて教えてください。

浦野医師(以下、敬称略) まず、高血圧をはじめとする症状が出る妊娠高血圧症候群になる確率が上がります。以前は妊娠中毒症と呼んでいたものです。重症化すれば、母子共に命の危険を伴うものです。

 高齢出産では妊娠判明時に子宮筋腫(良性の腫瘍)が見つかるケースも多いです。筋腫は現代女性にとって一般的な病気で、3cmくらいまでのものなら問題はありませんが、4cm以上になると出産に影響が出る場合もあります。例えば、頸部筋腫といって子宮口に近いところに4cm以上の筋腫ができると、分娩時に赤ちゃんが引っかかってしまうこともあります。筋腫の大きさに限らず、子宮筋腫のある子宮は微弱陣痛になりやすい傾向があることも分かっています。

―― 微弱陣痛とは?

浦野 いざ陣痛が始まっても、陣痛がなかなか強くならず、時間だけが経過してしまうのが微弱陣痛です。そうすると、お産が進まないまま、母体の疲労だけが蓄積されていきます。分娩は「子宮の収縮力の強さ」「胎児の大きさ」「産道の広さ」の3要素が整うことで進むといわれていますので、微弱陣痛だと難産につながる可能性が増すのです。

 最近の妊婦さんは、特に子宮の収縮力が弱いと感じます。子宮の収縮力は骨盤底筋の強さが影響します。子宮の収縮力が弱いと、胎盤が剥がれた後の出血も止まりにくくなります。

―― 子宮の収縮力をつけるためにできることはありますか?

浦野 体重管理が大事です。脂肪がつき過ぎると、子宮の収縮を起こすオキシトシンというホルモンが吸収されてしまい、微弱陣痛になります。高齢出産の方は、脂肪がつきやすくなる年齢ですし、妊娠高血圧症候群を防ぐためにも、体重管理はことさら大事です

 普通体型の人なら、妊娠前との比較で12kg増まで。それ以上増えると、帝王切開での分娩になる率が高まります。お産は瞬発力ではなく、マラソンのような持久戦。普段からヨガなどでインナーマッスルを鍛えてほしいと思います。妊娠前なら、骨盤底筋を鍛えてくれる運動もいいですね。

 また、高齢になると筋肉が固くなり、会陰の伸びも悪くなる傾向があるので、会陰切開になる可能性が高まります。