ふだんは機嫌良く、大人しいこともないけれど腕白すぎることもない、どちらかというと特徴のない性格の息子。けれど──あれってなんなんでしょうかね、思っていたはずの、想像していたはずの段取りに不備が出たりすると、こう、感情が爆発するみたいな感じでもって、「ギャー」とシャウトして怒りみたいなのをあらわにするのだ。正直、最初のときはあまりの激しさに親なのに少し引いてしまったくらいだ。他人がみたら、たとえ子ども連れの方であっても「……」みたいな感じで、ばっちり目をそらされる感じ。

 これがわりに頻繁に起きるようになったのだ。おみかんの皮を剥いてあげたら自分が剥きたかったのに、というようなこともあれば、プラレールの電車の配置を勝手に触られた、とかでそうなるときもあった。でも、同じことをしてもまったく平気なときもある。わからない。ルールが見えない。しかしそうなってしまうとしばらくは手がつけられないようになってしまって、べつに珍しいことじゃないんだろうけれど、これがお互いに、大変つらかった。

保健師さんに勇気を出して相談してみたら…

 3歳検診のとき。すべてのチェックが終わったあとに、ほかに何か心配事はありませんか、と言われて、少し勇気を出して保健師さんに相談してみることにした。「か、かんしゃくみたいなのを起こすことがあって、それがけっこう、いや、相当に激しめで……」。子どもはみんな違うのだし、だいたいのことは気にすることない、どうってことない、と自分はそう思うことのできるタイプだと思っていたけれど、でもそれはどうやら「そういう自分でありたい」と思っていただけだったみたい。子どもの心配な部分や不安に感じる部分の原因は自分にあるんじゃないかという思いがどこかにあって、保健師さんが「だーいじょうぶですよお」と明るく言ってくれたときは、ほっとして涙がにじんだことに自分でも少し驚いた。

「そういうとき、どうされてます?」
「どうして泣くの、なにが嫌だったの、って聞いても、さっぱりで……」
「そうですよね。でもお母さん、今度そうなったら、思いきって、放っておいてみてください
「放っておく……?」
「そうです。その場からいなくなって、どんなに泣いても叫んでも、かまわないの。そしたらしばらくして、泣きながらだけど向こうからやってきます。そしたらそこで初めて抱っこしあげて、そしてここが大事なんですけど──抱っこしたら、もうその話はしないの
「と、いうと……」
「もう、全然べつの話をするんです。まったく関係ない話。理由もきかない、もうだいじょうぶ? みたいなこともいっさいなし。さっき泣いたり叫んだりしたことと、この安心は関係がないってことをわかってもらうんです。それをくりかえすことによって、泣いても叫んでも、何にもならないってことがわかるんです」
「……わたし、『あんな叫んだら喉破けるで』とか『もうあんなんあかんで、救急車くるで』とか、抱っこしたあともけっこうねばねば言ってました……」
「そうそう。でも、なかったことにするの。そういう自分の行為が何にも影響しないんだなってわかるのが大事で、そうなると、だんだんなくなってきますよ

 教えてもらったことを、わたしはすぐに試してみた。すると……。