入塾までに確立しておきたい「家庭の力」とは?

西村則康先生
西村則康先生

 中学受験の勉強は小3の2月からスタートしますが、実はその前に準備をしておきたいことがあります。そう聞くと、早期教育をイメージする方もいるかと思いますが、そうではありません。

 「入塾までに確立しておきたいのは『家庭の力』です」

 そう話すのは、西村先生です。詳しく解説しましょう。

 「低学年のうちは先取り学習よりも、まず日常をきちんと回すことが一番大切です。実は、日常生活のすべてが学習につながっています。例えば、挨拶がしっかりできる子は共感性を育むことができます。共感性は国語の読解力に必要な力です。共感性がある子は、この問題文にはどんな意味が込められているのだろう? という読み方をするので、作問者の考えを読み取ることができ、すなわち正解を導くことができます」

 「また、家のお手伝いをする中で学ぶこともあります。例えば、お母さんにお使いを頼まれたときのおつりや、野菜を切ったときの断面などは、のちの算数の学習にもつながってきます。こうした実体験をしている子としていない子では、算数的な感覚が違ってきます」

 「一方、この時期に家庭学習の習慣をつけておくことも大事です。極端な早期学習はおすすめしませんが、今の小学校では、小学校に入学した時点で、ひらがなやカタカナ、数字が書けて当たり前になっています。親世代とはスタートラインが違うことを知っておきましょう。それと同じで、中学受験では、小3の2月の段階で、“読み書きそろばん、授業の聞き方、家庭学習の習慣などができていて当たり前”という状態からスタートします。つまり、これらは低学年のうちに家庭でしっかり体勢を整えておかなければいけないということです」

 「共働き家庭の場合、家庭学習を習慣づけるには、親のスケジュールに子どものスケジュールを入れ込んでしまうといいでしょう。例えば、朝7時に朝食を取るという習慣があれば、『それまでにお母さんはアイロンがけをするから、あなたはドリルをやっておこうね』という流れをつくるのです。そうすれば、忙しい共働き家庭でも、無理なく家庭学習の習慣を身に付けることができます」

忙しいDUALファミリーこそ、楽しい会話を心がけて

 「そして、食事の時間は親子の会話を楽しみましょう。実は子どもの言語力は家庭の言語力にかかっているのです。中学受験では、小学生には難しい言葉も出てきます。子どもだからといって、簡単な言葉ばかりを使わず、時にはちょっと大人扱いをした会話をするといいでしょう」

 「また、会話の中で分からない言葉が出てきたとき、『あれ、何て言ったらいいんだっけなぁ?』『これって何だろうね?』など“気になる感覚”を大事にしてほしいと思います。なぜなら、それが“気づく力”へとつながってくるからです。また、気になることは調べる習慣にもつながります。この“調べる”習慣は、中学受験に限らず、すべての学ぶ力になります」

 けれども、共働きの家庭は、親子で過ごす時間に限りがあります。親子でゆっくり向き合う時間がないという場合はどうしたらいいのでしょうか?

 「時間の長さは関係ありません。けれども、親が忙しいと、短い時間の会話は『宿題はやった?』『早く勉強しなさい!』と子どもを急き立てる言葉だけになってしまいがちです。でも、それは会話とは言えません。短い時間の会話こそ、『今日は学校で何をやったの?』と子どもに質問をし、子どもの話を聞いてあげましょう。そのときに『へぇ~、それはよかったね』『楽しそうだね』など、子どもを褒め、認めてあげる声をかけてあげるといいですね。そうすれば、子どもは機嫌よく話をするようになります。そして、話すことは楽しいということを教えてあげてほしいと思います』

 「大事なのは、時間の長さではなく、向き合い方。それを低学年のうちにしっかり育んでおきましょう。いつも前向きな声かけをして、子どもに自信を持たせてあげることです。そして、親はどんなに不安に思っても『うちの子はできる!』『うちの子なら大丈夫!』とお子さんの力を信じてあげることです。この親のゆるぎない信頼感が、子どもの自己肯定感を育て、どんな壁にぶつかっても乗り越えられる力となるのです。それが、中学受験には絶対に必要で、その『家庭の力』こそ、成功のカギを握るのです」

 次回は、同セミナーの第2部の内容について紹介します。

(図デザイン/Coccoto 鈴木裕美子)

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