ハード面・ソフト面を意識して、受験勉強全体をコーディネートする

 上の図は、中学受験の正しい学習のやり方を示したものです。小川先生はこう説明します。

 「先にも述べましたが、今の時代の中学受験は、大手受験塾に3年間通って学習を進めていくことを前提にしています。なぜなら、大手塾では受験のカリキュラムがしっかり組まれているからです(詳しくは以前の記事『こんなに違う! 大手中学受験塾の中身を解剖』を参照)。ですから、ハード面に当たる『何を』の部分には、塾のカリキュラムやテスト、またテストの進度表などが入ります。ざっくりと言ってしまえば、大手塾に通っていれば、学習カリキュラムにおいては問題ないということです」

 「しかし、ここで知っておかなければいけないことがあります。塾はカリキュラムの提供はするけれど、どのように勉強をするかまでは教えてくれない、ということです。誤解されやすいのですが、塾の先生は授業はしますが、宿題やテスト対策・直しの取り組み方や、いつ何をどこまで学習しておくべきかなどの勉強のやり方まではあまりフォローしてくれないのです。塾の先生は“人”ですから、塾のソフト面を担っていると思っているご家庭が多いと思います。でも、実は授業をするだけの先生は、それが良いか悪いかは別として、塾のハード面の一部であることを知っておきましょう」

 「では、ソフト面の『どのように』に該当するタイムマネジメントや子どものモチベーションアップは誰がやるかといえば、それは各家庭です。タイムマネジメントについては、先ほどのPDCAの話になりますが、小学生の子どもに自分で学習管理や時間管理をさせるというのはまだ無理なので、親が一緒にやる必要があります」

 「しかし、親世代と今では中学受験の中身も変わってきていますし、中学受験を知らない親は、どのように進めていけばいいのか分からないこともあるでしょう。また、共働きのご家庭では、時間的にお子さんの勉強を見てあげられない場合もあります。そんなときは、中学受験専門の個別指導塾や家庭教師など第三者の力を借りることをおすすめします」

 「中学受験期間に当たる4~6年生の子どもは、まだ親の言うことを聞く半面、自我にも目覚め、時には親子がぶつかり合いギクシャクすることもあります。親はわが子をなんとか合格させたいという思いから、必要以上に勉強をさせたり、厳しい言葉をかけてしまったりしがちですが、子どもを追い詰めてしまうことだけは避けなければなりません

中学受験の成功の秘訣は、子どもを気持ちよく勉強させること

 「中学受験の成功の秘訣は、子どもを気持ちよく勉強させることです。大人でもそうですが、人に嫌みや厳しい言葉を掛けられるより、褒められたり、励ましてもらったりするほうがうれしいですよね? それは親子でも同じです」

 「中学受験では、どんな子でも、途中うまくいかない時期があります。そんなときに『どうしてこんな点数しか取れないの!』『このままでは合格できないわよ』と言われて、やる気を起こす子などいません。子どもだって、自分がこのままではいけないことは分かっているのです。ですから、そんなときほど、子どもの気持ちに寄り添い、励ましてほしいと思います。それができるのは、お子さんを一番よく知っている親御さんのほかありません。中学受験では、実はここが一番大切であることを親御さんにぜひ知っていただきたいと思います」