仕事も子育ても、一生懸命がんばりたいのに、うまくいかずに疲れてしまう。そんなあなたに心理カウンセラーの下園壮太さんがくれる処方箋とは――。

 連載第4回目は、子育てをする中で湧き上がってくる「母親への複雑な思い」との向き合い方をテーマに考えていきます。

「よかれと思って」の母親のアドバイスに傷付く

 あなたは今、お母さんとどんな関係にありますか?

 子育てをしていると、これまでとは違い、子ども(母親にとっては孫)を介したやり取りが増えてきます。食べさせるもの、塾のこと、しつけについて……ささいなことでぶつかり、イライラしている人も多いかもしれません。

 様々なクライアントと接する中で、子育て中に生じる母親との葛藤は、自らの母親がかつて専業主婦だった場合と、忙しく働いていた場合とで少しパターンが異なるように感じています。

  お母さんが専業主婦だった人=自責感を助長する
 専業主婦として子育てを最優先してきたために、「子育てはとても大切なこと」という価値観を強く持っている、子育てよりも仕事を優先させている娘をじれったく思ったり、責めたりする傾向にあります。

  お母さんが忙しく働いていた人=がんばりが足りないと叱咤する
 子育てしながら仕事を続けてきた自負心から、「自分のときはもっと大変だった」と苦労話をすることが多い。また、子育てで悩んでいても、「あなたのがんばりがまだまだ足りないのでは?」と叱咤する傾向にあります。

 いずれのパターンでも、責められる側はつらいものです。

 子育てしながら仕事をしているDUAL読者は、日ごろから「自分の子育ては中途半端ではないか」という罪悪感を大なり小なり抱えているかもしれません。この罪悪感を、母の何気ない、例えば「それ、作らずに買ったの?」といった一言が刺激するのです。恐らくお母さんの側は、あなたを傷付けようという気など、さらさらないのかもしれない。しかし、日本は世界と比較しても「子どもは親の言うなりになるものだ」と捉える価値観が強い、という報告もあります。孫のかわいさも相まって、「(親である)私がちゃんと(娘に)子どもの育て方を教えなきゃ」と、お節介な言葉を連ねてしまう傾向があります。

 実際に私が、うつ状態のクライアントの親御さんとお話をすると、50代の母親が30代の立派な大人である子どものことを「あの子は、何にも分かっていないんです!」と、子ども扱いしていることが多い。そういった価値観に、本人は全く違和感を持っていません。