当事者がつらくて見られない闘病ものにはしたくなかった

――映画『はなちゃんのみそ汁』を見る前は、見たら悲しくて泣いてしまうだろうと思っていたのですが、たくさん笑顔になれる映画でした! 面白いところがあって、すごく前向きになれる幸せな作品だと思いました。

「よかった! そうなるように努力して作りました。千恵さんのブログはいつも明るくて、時々ネガティブなことを書かれたときは、翌日に猛省されていたくらいだったんです。だから僕も、当事者の方や身内の方が、つらくて見られないような闘病ものにはしたくありませんでした。当事者が見られなければ意味がないと思ったとともに、はなちゃんが映画を見たときに、ママはこんな人だったと思ってもらえる映画にしたかったんです」

――映画を撮るに当たって、安武信吾さんや、はなちゃんと一緒に過ごされて、親しくなったそうですね。

「そうです。家族ぐるみで付き合うようになりました」

――一緒に過ごすことで、どのように映画作りに反映されましたか?

「安武さんは、どんな映画になるのかすごく気にされていました。僕が面白いものを作りたいと話したら賛同してくれたんですね。ブログや原作にはないところを膨らませたいと思っていたのですが、一緒にお話しするうちに、ちょこちょこと思い出してくれました。彼の話を聞いていたら、千恵さんがなぜ彼にほれたのか分かってきたんです。安武さんは、すごく無邪気な方なんですよ(笑)。安武さんのほうが千恵さんよりかなり年上だけど、どちらかというと千恵さんのほうが年上のような関係だったんですね。僕も彼と会ったら、すぐに意気投合して、友達になれました。安武家にもお邪魔して、僕とうちの娘とはなちゃんで餃子を作って、安武さんとビールを飲みながらみんなで食べたりね。彼の楽しくてがむしゃらな人柄がスクリーンに出たらいいなと思って、映画を作りました」

――無邪気な感じがスクリーンから伝わってきました!

「あと、はなちゃんが誕生して、千恵さんはすぐに母親になったけど、安武さんは徐々に父親になっていったという話を聞いて、それを映像にしたいと思いました。劇中で信吾は、最初のほうはスタスタと歩き、はなちゃんは走ってパパを追いかけます。でも、映画の後半になると、はなちゃんと同じ歩幅で手をつないで歩いています。彼が父親になったという証拠ですね」

信吾が徐々に父親になっていく様子を歩き方で表現
信吾が徐々に父親になっていく様子を歩き方で表現

保育園のお迎えに行く信吾
保育園のお迎えに行く信吾

――世のパパにも同じような人がいそうです。信吾役の滝藤さんには、どのように演出されたのでしょうか?