自然界のあらゆるものは、たった92種類の原子の組み合わせでできています。何から何まで元をたどれば原子なのに、その原子の中身がほとんど空っぽだと聞いたら驚きませんか? しかもそのミクロ世界の眺めが、巨大な宇宙のそれと似ているというのだから興味シンシン! とにかく不思議なミクロの世界を巡る旅、引き続き国立天文台准教授の麻生洋一さんに案内してもらいましょう。

<後編・ポイント>
●原子の中では原子核の周りを電子がグルグル回っている
●原子核が3ミリの米粒なら電子の軌道は直径300メートル。中には原子核のほかに何もない
●「何の原子か」は電子と陽子の数で決まる
●宇宙にある物質のうち原子はたった5%。あとは正体不明……

なぜかそっくり。極小の原子と巨大な太陽系

 

水も空気も岩石も、東京スカイツリーの鉄骨も、どこまでも分解していけば原子にたどり着きます。そう考えると信じられないのが原子の構造です。驚いたことにその中身はほとんど空っぽなのです。

 「中心に小さな小さな原子核があって、その周りを電子が超高速で飛び回っているというのが原子の基本的な構造です。専門的には色々とややこしい理屈があるのですが、原子核と電子の間は何もない真空と考えてください」

 仏教の経典である般若心経に「色即是空」という言葉があります。「この世のあらゆる物質は無(=何もないこと)に等しい」といった意味です。すべてのものがほとんど空っぽの原子でできていることを知ると、なにやら示唆的に思えてきます。もしかすると仏教の祖、仏陀にはミクロの世界が見えていたのかも?

原子核の周りを電子が回るという構造が、太陽のような恒星の周りを地球のような惑星が回るそれと似ているのも興味を引くところでしょう。もちろん仕組みはだいぶ違うとはいえ、大きな宇宙にもミクロの世界にも似たような風景が広がっていると思うと、ちょっと面白くありませんか。