ものをどこまでも分解していくと、分子、原子にたどり着く。そこまでは何となく知っていても、分子や原子がどんなものかをイメージできる人は少ないことでしょう。梶田隆章さんのノーベル賞受賞で話題に上ったニュートリノとなると、いよいよチンプンカンプン? でも、知れば知るほど興味が湧くのがミクロの世界です。想像を絶する不思議な光景が広がる「小さな宇宙」を、国立天文台准教授で物理学者の麻生洋一さんに教えてもらいましょう。

<前編・ポイント>
●分子はその「もの」の性質を持つ最小の単位
●一番小さい「水の粒」(水の分子)の大きさは1000万分の3ミリ
●すべての分子は原子という「ブロック」の組み合わせでできている
●自然界の原子は全部で92種類しかない

ノーベル賞で話題を呼んだ「ニュートリノ」って何?

 最近、ノーベル物理学賞を受けた梶田隆章さんの功績は「ニュートリノに質量(重さ)があることを実証したこと」。これがどんな意味を持つのか以前に、ニュートリノって何なの?と首をかしげてしまいます。

 「私達の周りにあるすべてのものの最小単位は、酸素や水素、炭素などの原子です。しかし原子にはまだ『その先』があります。さらに分解して最後にたどり着くのが、これ以上分けられない究極の物質である素粒子。ニュートリノとは何種類もある素粒子の一つです」(麻生さん)

 古代ギリシャのデモクリトスという哲学者は、「万物は、それ以上分割できず永遠に変わらない究極の物質アトム(と空虚)でできている」と考えました。19世紀になってから化学者が提唱し、その存在が確実視されるようになった原子は、当初デモクリトスのいうアトムだと思われていました。ところが20世紀の初め、物理学の進歩で原子はさらに分解できることが判明。その後、原子を形作る素粒子が続々と発見される中、それらがどういうものなのかが少しずつ明らかになっています。梶田さんのノーベル賞受賞はそんな流れの中の出来事なのです。